放射線Q&A15:環境放射線量から計算した年間被ばく量と個人積算線量計の違いは?

2014年4月28日

Q15:環境放射線量(空間線量率)から計算した年間被ばく量と個人積算線量計で測定した年間被ばく量は違うのですか? 原子力規制委員会が除染効果を確認するのに、環境放射線量ではなく、個人積算線量計で測定した値で判断すべきとしたのはなぜですか?

 

回答

 環境放射線量と個人線量計による線量は違います。
 

 環境放射線量率あるいは空間放射線量率とは、通常は、ある地域の屋外における地上1メートルで測定した1時間分の線量に相当する値で、よくテレビやラジオ等で毎時○○マイクロシーベルト(毎時μSv又は μSv/時)と言っているのがこれです。
 この測定が途切れることなく1年間測定されていた場合、それを足し合わすと、本当の1年間の線量となりますが、通常は、1時間の線量値に1年間の時間( 8,760時間:365日×24時間 )を掛けた線量を年間線量としています。
 また、普通に生活している人の1日の被ばく線量を推計する場合、国では1日のうち屋外に8時間、屋内に16時間いると想定します。このとき、屋外から来る放射線は壁などで遮蔽されるために、線量は屋内では屋外の4割に減少すると考えます。このようにして求められた値がその地域の人々の被ばく線量として扱われます。 
 ※詳細な計算は下をご覧ください。
 
 一方、個人積算線量は、一人ひとりがある期間、身に付けた線量計で測った線量を積算線量と言います。例えば、線量計を2ヶ月間だけ着用した場合は、2ヶ月間の積算線量となり、それを6倍した値を年間の被ばく線量とすることが多いです。

 ところが、これまでの福島県内の調査では、個人線量計での線量値は、空間線量値から出した値の1/3から1/7という報告(2013.11.12、日本経済新聞)もあり、両者に差があることが明らかになりました。
 
 では、地域の年間被ばく線量と個人線量計で測定した被ばく線量が違うのはどうしてなのでしょうか。

 先に書いたように、地域の線量は、その地域の屋外を代表するような値ですが、個人線量値は、個人の行動に深く依存します。一般的には、多くの人は屋外で過ごす時間が少なく、屋外よりも線量が低い屋内で長い時間生活しています。しかも、その屋内も、壁などの厚さや家具の置き具合などによって、同じ家の中でも線量に相当に大きな違いがあります。また、個人線量計は通常胸の位置に付けますが、放射線が体の後ろから来た場合、一部は体で遮られるために、線量計の値は少し低くなります。
 これらのことから、空間線量率から推計した年間被ばく線量は、個人積算線量の測定値から推計した値と比べて大きい値となります。


 次に、原子力規制委員会が除染効果を確認するのに、環境放射線量ではなく、個人積算線量計で測定した値で判断すべきとした理由ですが、以下のように考えられます。

 一つ目は被ばく線量とは、あくまで人が実際に被ばくした(する)線量ですので、個人線量計で測定された値があるなら、環境放射線量ではなく、そちらを使うべきだということです。もちろん、個人線量には大きな幅がありますから、少人数の値ではなく、大勢の人による平均値を取り、また最大値にも配慮する必要があります。
 そして二つ目は、放射線測定器の測定値は、実効線量よりもだいぶ大きく出るので、除染の目標を実効線量に近づけることにより、労力や経費を効果的に使い、短期間で除染ができるということです。これは決して健康影響を軽んじる措置ではなく、実情に合わせた、より合理的な方策と言えます。

(※放射線測定器の値と実効線量の話はややこしいので、下記で説明しますので、そちらをご覧ください。)

 なお、空間線量や個人積算線量から年間の被ばく線量を推計する場合に注意しなければならないのは、1時間の値である空間線量率や1,2ヶ月の積算線量が、1年中あまり変動せずに一定であるという考えに立っていることです。時間と共に変わる場合は、そのことを考慮しなければならないので、変化の様子をしっかり知る必要があり、このことを考慮して値を修正したり、あるいは再計算する必要があります。


【空間線量からの1年間の追加的被ばく線量の計算 】  ※国の除染の目安
○追加的被ばく線量とは福島第一原発事故で放出された放射性物質による被ばく線量のことで、自然放射線による被ばく線量は除きます。

★1日の追加的被ばく線量(μsv)
 ((1時間当たりの放射線量)-0.04(自然放射線量))×8時間 + ((1時間当たりの放射線量)-0.04(自然放射線量))×0.4(遮へい効果※)×16時間 
  ※家の中は、放射線が壁などに遮られ、外の4割の量に減少するとして計算されます。
  ※県内の自然放射線量は平均で0.04マイクロシーベルト/時であることがわかっています。

★1年間の追加的被ばく線量(μsv)
 1日の追加的被ばく線量 × 365日 
  ※値はマイクロシーベルト(μsv)になります。ミリシーベルト(mSv)に直すには1,000分の1にしてください。
  

【 実効線量と1cm線量当量 】 
 放射線の人体への影響を表す単位はマイクロシーベルトですが、実はマイクロシーベルトで表される値にはいくつか種類があります。ここではその中でも良く使われる実効線量と1cm線量当量(空間線量)の違いについて説明します。
 実効線量とは、放射線が人体に及ぼす影響の大きさを表す量です。人体の臓器や組織ごとに放射線から受ける影響が違うため、臓器や組織ごとの線量にそれぞれの放射線感受性の違いを入れて計算したもので、測定器では直接測定することができません。被ばく線量とがんリスクの関係などで使われる被ばく線量はこの実効線量のことです。
 これに対し1cm線量当量とは、実効線量が直接測定できないため、測定器で測定できるように定義した実効線量に近い線量のことです。よく使われる放射線測定器(サーベイメータ等)で測定した値は、正確には1cm線量当量(空間線量)のことで、放射線を測定する時に安全側に評価できるように、実効線量よりも値が大きくなるようになっています。
 福島第一原発事故後、国は、正確な実効線量は直接測定できないため、容易に測定できる放射線測定器の測定値(1cm線量当量)を実効線量と同じとして扱ってきました。また、放射線測定器の値(1cm線量当量)と実効線量の違いは、一般の方が理解するには難しく、これまでほとんど説明されてきませんでしたが、放射線測定器の値(1cm線量当量)は実効線量の1.6倍にもなるという論文があるなど、実際には安全のためにかなり大きく出るようになっています。

 

【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生

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