○会津若松市食料・農業・農村基本条例

平成14年3月15日

会津若松市条例第1号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 基本的な施策

第1節 施策の基本方針(第8条・第9条)

第2節 食料に関する施策(第10条・第11条)

第3節 農業に関する施策(第12条―第17条)

第4節 農村に関する施策(第18条―第21条)

第5節 施策の推進(第22条―第24条)

附則

会津若松市の農業・農村は、豊かな資源と自然環境に恵まれ、食料の安定供給や自然景観の維持などを通して、市民生活や地域経済の発展に大きく貢献してきた。

しかし、農業・農村を取り巻く状況は厳しく、農家戸数、農業の担い手の減少や食料自給率、農村活力の低下などが危惧される中、農業・農村の振興策を総合的かつ計画的に進めることが必要であり、持続的に発展できる農業生産構造の確立が強く求められている。

農業・農村は、食料の生産だけでなく、林業の担い手としての役割も含め、水資源や自然環境の保全に寄与するとともに、農村に伝わる文化の伝承等多様な役割を担っており、今後とも地域の特色を生かした豊かで活力ある農業・農村の展開を図ることが重要である。

また、「地産地消」の理念に基づく地域内食料の自給体制の確立や自然環境と調和した農業を推進するため、「共生」と「循環」を基本とする農業・農村の果たす役割・機能を「農村文化」として地域社会に定着させることが大切である。

こうした視点に立ち、農業・農村の振興を進めていくためには、農業者自らの意欲はもとより、市民1人ひとりが農業に対する認識を共有しながら、地域農産物の消費及び利用の促進を図るとともに、市の農業を貴重な財産とし、基幹産業として育むことが必要である。このため、農業・農村の重要性を食・農教育を通して次世代に引き継ぐとともに、地域資源を生かし魅力ある農林業が息づく地域社会を目指すため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、食料、農業及び農村のあり方についての基本理念を定め、並びに市、農業者、農業に関する団体、市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、食料、農業及び農村に関する基本的な施策等を定めることにより、安全で安心な食料の安定供給や環境の保全に配慮し、持続的に発展する農業の確立及び豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 会津ブランドの確立 農産物の生産振興、加工等による農産物の高付加価値化等により、市の農産物を他産地に誇れる地域産品として確立し、地場産業の振興に結びつけていくことをいう。

(2) 食・農教育 農業体験、地元農産物の利用等を通して、子どもたち等が食料及び農業の大切さの理解を深めることを目的として、地域社会、家庭、学校等で行う教育活動をいう。

(3) 農業の自然循環機能 農業生産活動が、自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。

(4) 土地利用型作物 単位面積当たりの収益性は低いが、機械化による省力的な作業体系の確立により、一定規模以上の面積を利用しながら収益性を高めていく作物であり、市においては水稲、大豆、そば等をいう。

(5) 優良田園住宅 優良田園住宅の建設の促進に関する法律(平成10年法律第41号)第2条に規定する優良田園住宅をいう。

(基本理念)

第3条 食料は、人の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎となるものであることから、国内はもとより地域内での自給を基本とし、食料自給率の向上及び健全な食生活の推進を目標として、安全な食料の安定供給等消費者に顔の見える農業の確立を図り、将来にわたって消費者及び生産者の安心を保障するものでなければならない。

2 農業は、農地、農業用水その他の農業資源及び担い手が確保され、これらの効率的かつ安定的な組み合わせによる自立した農業として確立されるとともに、自然循環の維持増進により、その持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることから、農業の生産条件及び農村の生活環境の整備により、豊かで活力ある農業及び農村の実現に向けて、その振興及び活性化に取り組み、農村の持つ多面的な機能が十分発揮できるようにしなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念に基づき、食料、農業及び農村に関する施策を総合的に推進するものとする。

2 市は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるときは、国、県、農業者、農業に関する団体、消費者等と連携するとともに、国及び県に対して施策の提言を積極的に行うものとする。

(農業者等の責務)

第5条 農業者及び農業に関する団体は、安全な食料の安定的な供給に努めるとともに、自らが農村における地域づくりの主体であることを認識し、農業及び農村の振興に関し積極的に取り組むよう努めるものとする。

(市民の責務)

第6条 市民は、食料、農業及び農村に関する理解を深めるとともに、地域農産物の消費者として、その消費及び利用の促進を図ることにより、農業及び農村の振興への協力に努めるものとする。

(事業者の責務)

第7条 事業者は、食料を使用するときは、地域で生産された食料を地域で使用する地産地消の推進に努めるとともに、宿泊施設及び販売、飲食等に関する事業所においては、おもてなしの心をもって地場産品の提供及び啓発宣伝に努めるものとする。

第2章 基本的な施策

第1節 施策の基本方針

(施策の推進に係る指針)

第8条 市は、食料、農業及び農村に関する施策の実施に当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本とし、総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 安全かつ良質な食料を安定的に供給し、食料自給率の向上を図ること。

(2) 地域で生産された農産物の消費拡大及び健康的な食生活の推進を図ること。

(3) 自然と調和した農業の推進並びに森林の保全及び林業の振興に関する施策との連携を図ること。

(4) 農業の担い手を育成及び確保し、並びに地域の特性を生かした農業を促進すること。

(5) 魅力ある農業経営及び収益性の高い地域農業の確立を図ること。

(6) 需要に即した新しい農産物の開発を進めるとともに、会津ブランドの確立を図ること。

(7) 農地、農業用水その他の農業資源を確保し、整備すること。

(8) 隣接する地方公共団体と連携し、一体的な産地形成や地域間交流を図ること。

(9) 農村における計画的な土地利用の促進及び農村の住環境の整備を図ること。

(10) 都市と農村との交流の促進を図ること。

(11) 農業及び農村の持つ役割及び多面的機能を通して、食・農教育の推進を図ること。

(基本計画の策定)

第9条 市長は、この条例に基づく食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画を策定するものとする。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針

(2) 食料自給率及び農地の有効利用に関する目標

(3) 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策

(4) その他市長が必要と認める事項

3 市長は、食料、農業及び農村をめぐる情勢の変化等を踏まえ、必要に応じ基本計画を見直すものとする。

4 市長は、基本計画を策定するにあたっては、会津若松市農政審議会の意見を聴かなければならない。

第2節 食料に関する施策

(安全な食料の安定供給)

第10条 市は、安全な食料の安定供給を図るため、地域内自給を基本とした食料自給率の向上、市民が安心して消費できるような食品の安全性の確保その他必要な施策を講ずるものとする。

(会津ブランドの確立)

第11条 市は、会津ブランドの確立を図るため、消費動向に対応した新しい農産物の開発及び生産の振興並びに付加価値の高い農産物の生産体制の確立等特色ある産地づくりを推進するとともに、地場産品を愛用する運動の展開その他必要な施策を講ずるものとする。

第3節 農業に関する施策

(自然環境に調和した農業の推進)

第12条 市は、循環型で持続的に発展する農業を確立するため、減農薬・減化学肥料栽培等を含めた有機栽培農法の推進、有機性資源の有効活用その他農業の自然循環機能の維持増進に必要な施策を講ずるものとする。

(担い手の育成及び確保)

第13条 市は、意欲ある農業の担い手の確保及び効率的な組織経営の促進を図るため、誇りをもって農業に従事し、かつ、安定した収入が確保できるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、新規就農者、高齢農業者、女性農業者等多様な農業の担い手の育成を図るため、必要な施策を講ずるものとする。

(集落営農体制による生産性の向上)

第14条 市は、収益性の高い農業を確立するため、意欲ある農業の担い手等への農地集積、土地利用型作物の団地化、地域振興作物の産地化その他必要な施策を講ずるものとする。

2 市は、食料の安定供給に必要な農業生産の確保及び振興を図るため、広域流通に対応できる産地化及び適地適作の推進に必要な施策を講ずるものとする。

(農地の確保及び有効活用)

第15条 市は、市内の農業生産に必要な農地の確保及びその有効利用を図るため、計画的かつ効率的な土地利用の促進、豊かな土壌の維持その他必要な施策を講ずるものとする。

(農業経営の安定)

第16条 市は、農産物の価格変動等が農業経営の安定に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

(農業情報化の推進)

第17条 市は、情報化に対応した効率性の高い農業を確立するため、情報技術を活用した農業生産及び農業経営の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

第4節 農村に関する施策

(農村の総合的な振興)

第18条 市は、秩序ある土地利用並びに良好な景観の保全及び創造に配慮しながら農村の総合的な振興を図るため、道路等生活環境の整備を進めるとともに、農村の持つ伝統文化の継承その他必要な施策を講ずるものとする。

(快適な農村生活環境の整備)

第19条 市は、豊かで住みよい農村を目指すため、総合的な生活環境の整備及び自然環境の保全に努めるとともに、優良田園住宅の建設等の促進、交流の場の創設、中山間地域の振興その他必要な施策を講ずるものとする。

(都市と農村の交流の推進)

第20条 市は、農業及び農村の振興を図るため、地域資源等を活用した都市住民との交流体験及び農産物の都市住民への直売に対する支援その他必要な施策を講ずるものとする。

(食・農教育の推進)

第21条 市は、次代を担う子どもたち等が、農村における交流体験等を通して、農業の持つ様々な役割及び多面的機能について理解を深めるため、食・農教育の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

第5節 施策の推進

(農業団体等との連携)

第22条 市は、食料、農業及び農村に関する施策の推進に当たっては、農業に関する団体及び観光、商工等の産業に関する団体との連携を強化し、総合的かつ効率的な施策の展開を図るものとする。

(財政上の措置)

第23条 市は、食料、農業及び農村に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(啓発)

第24条 市は、食料、農業及び農村に関する施策の市民理解を促進するための啓発活動その他必要な措置を講ずるものとする。

この条例は、平成14年4月1日から施行する。

会津若松市食料・農業・農村基本条例

平成14年3月15日 条例第1号

(平成14年4月1日施行)