令和3年度施政方針
施政方針とは、新年度における市長の市政運営に対する基本的な考え方について述べたものです。
施政方針(印刷用)
【はじめに】
本日、令和3年2月市議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様にはご参集を賜り、厚く御礼を申し上げます。
本定例会の開会にあたり、令和3年度会津若松市一般会計予算をはじめとする諸案件のご審議をお願いするとともに、市政執行に取り組む私の所信と施策の大綱を申し述べ、ご理解とご協力を賜りたいと存じます。
【施政にあたっての基本的な認識・考え方】
まず、昨年来の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、私たちの生活を一変させ、それにより地域の社会活動や雇用・経済に大きな影響が生じています。このような中、医療や保健、介護に従事する方々はもとより、すべての皆様が、生活や生業(なりわい)、絆、そして命を守るために、様々な取組を忍耐強く続けていただいていることに、改めて深く感謝を申し上げます。今後も、ウィズコロナを前提に、感染症の影響から市民生活を守ることを最大の使命として、感染対策を適切に講じ、社会経済活動の維持・再生に向けて取り組み、皆様と共にこの難局を乗り越えてまいります。また、全市民を対象としたワクチン接種については、庁内に専任チームを設置したところであり、医師会や医療機関などと連携して早急に接種体制を構築するとともに、感染対策の徹底により、地域医療体制の維持と市民の皆様の安全安心を確保してまいります。
さて、感染症拡大の影響による、人々の行動や意識、価値観の変容と、デジタル化・オンライン化をはじめとした社会の変革は、ポストコロナの「新たな日常」に求められるのみならず、日本の構造的問題である少子化・高齢化による労働人口の減少、生産性の低さ、東京一極集中などへの解決策となる可能性をも有しています。世界が変革を求められている今、日本、そして本市においても、この変化に対応し、自らを変革していかねばなりません。
感染症の拡大という困難な中にあっても決してあきらめることなく、絶えず自問自答を繰り返し、新たな視点を取り入れながら果敢に挑戦し、地域の課題解決を通したまちづくりを進めることで、魅力と競争力、活力と成長のある会津若松市を創っていかねばならないと、決意を新たにしたところであります。
【令和3年度の市政運営の考え方及び取組】
これらを踏まえ、令和3年度の市政運営にあたりまして、私は、引き続き、「自我作古」の思いを持って、先人が築いてきた会津の「宝」といえる地域の資産を、将来に向けて活かしながら、新しい未来へ繋がるまちづくりを進めてまいります。そのために、第7次総合計画のまちづくりのビジョンで掲げた「ともに歩み、ともに創る『温故創しん(おんこそうしん)』会津若松」に込めた、「参画と協働による地域資源を活かした新しい会津若松の創造」を基本政策とし、以下にお示しする5つの政策目標を柱として市政運営に臨んでまいります。
( 政策目標1 未来につなぐひとづくり)
1点目は、「未来につなぐひとづくり」であります。
先人が築いてきた「会津若松市」を継承し、守り育て、次世代へと引き継いでいくのは、子どもたちをはじめとした多様な人材であり、ひとづくりこそが未来を支える礎であることから、次代を創る子どもたちの育成と、生涯にわたる学びと活躍の推進に取り組んでまいります。
はじめに、子ども・子育て支援については、子育て世代包括支援センターによる妊娠、出産、育児等への切れ目のない支援に取り組みます。また、教育・保育施設等の利用者負担に係る市独自の多子軽減や、こどもクラブ受入定員の拡大などにより、安心して子育てができる地域の実現に努めてまいります。
次に、学校教育においては、すべての市立小中学校における児童生徒一人1台の学習用タブレット端末の整備・活用をはじめ、トイレ洋式化等により教育環境の整備を図ります。また、「あいづっこ学力向上推進計画」に基づく多角的かつ総合的な学力向上の取組を継続するとともに、会津大学や地域のICT企業と連携した教育の充実等に取り組んでまいります。さらに、学校のあり方については、保護者や地域の方々が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」と、学校教育の活動を地域で支援していく「地域学校協働本部事業」の更なる連携・協力により、地域とともにある学校づくりを進めてまいります。
また、延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に伴うタイ王国ボクシングチームの事前キャンプを契機とする本市スポーツの振興や、地域の文化芸術を育む環境づくりに向けた美術品等の常設展示機能の具体的な検討、さらには、デジタルアーカイブによる貴重な郷土資料の保存と生涯学習への活用を図ってまいります。
( 政策目標2 強みを活かすしごとづくり)
2点目は、「強みを活かすしごとづくり」であります。
産業分野は、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けていることから、まずは、感染症の影響の払しょくに注力してまいります。その上で、すべての人が自らの資質と能力を活かし、夢や希望を実現できる仕事に就くことを目指し、生活の基盤となるしごとの創出と、地域の個性を活かした賑わいと魅力の創出へと繋げてまいります。
はじめに、農業については、令和2年産の米価が外食需要等の減少に伴い下落したことを踏まえ、主食用米から飼料用米への転換や産地交付金を活用した振興作物の作付拡大を図ることで、米価の安定につなげるとともに、高い評価と信頼を得ている「AiZ'S-RiCE」の栽培技術向上に取り組むことで、安定生産体制の構築と販路拡大を図り、生産者の所得確保と農業の持続的発展を目指してまいります。さらに、担い手への農地の集積・集約化を推進するため、「実質化された人・農地プラン」作成への支援や、農地中間管理機構関連農地整備事業の取組を継続して進めてまいります。
また、イノシシの生息域拡大と個体数増加に伴い、有害鳥獣に係る課題が深刻化・広域化していることから、会津地域の13市町村が連携し、大型獣の捕獲に必要なライフル銃及びスラッグ弾の射撃場整備に向けて、測量設計に着手してまいります。
次に、商工業の振興については、感染症の影響を乗り越え、事業継続と雇用維持を図ることが重要であると認識しております。そのため、プレミアム商品券事業や商店街等が連携して行う消費喚起事業を支援し、市内における消費喚起と経済循環を図ることで、感染症拡大の影響で厳しい経営環境にある事業者を応援してまいります。
また、新型コロナウイルス対策特別資金(実質無利子型)への信用保証料補助の継続等により、中小企業の資金繰りを支援していくとともに、それぞれの事業所が感染症を乗り越え、発展し、地域経済を支える存在となるために、引き続き、関係機関と連携して強固な経営基盤構築に向けた取組を進めてまいります。
次に、本市の基幹産業であり地域経済に波及効果の高い観光産業については、先人から受け継ぎ、長年の取組により築き上げてきた地域の観光資源を維持・再開していくことが重要であると認識しております。そのため、「あいづあかべこ宣言」に基づく観光施設等の感染対策徹底を基本としながら、あかべこ券を活用した教育旅行誘致に取り組んでまいります。また、東京2020大会と東北デスティネーションキャンペーンを契機とした観光誘客や、史跡若松城跡を中心とした文化観光の推進についても、感染症の収束後を見据えて取り組んでまいります。
さらに、企業立地については、誘致企業の安定操業支援のほか、会津産業ネットワークフォーラムの活動等による市内ものづくり企業の事業拡張支援に努めてまいります。また、スマートシティAiCTをはじめとしたICT関連企業と、地域の自治体や事業者との連携に取り組むことにより、地域の課題解決や既存産業の生産性向上とともに、ICT関連企業の地域への定着を図ってまいります。そして、これらの取組により、安定した雇用と新たな人の流れ、地域への波及効果の創出につなげてまいります。
( 政策目標3 安心、共生のくらしづくり)
3点目は、「安心、共生のくらしづくり」であります。
高齢の方々や障がいのある方々、子どもたちを含めたすべての市民の皆様が、住み慣れた地域で暮らし続けるため、健やかで思いやりのある地域社会の形成と、人と豊かな自然との共生に取り組んでまいります。
はじめに、地域福祉の推進については、第2期地域福祉計画のもと、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現を目指し、地域住民自らが参画する包括支援体制の整備に向け、高齢・障がい・児童など分野の枠を超え、連携して取り組んでまいります。特に、今後、三人に一人が高齢者の時代を迎えるにあたって、持続可能な高齢福祉サービスの構築に向けた選択と集中が必要になることから、「つながりづくりポイント事業」により、世代を超えた地域住民の支え合いづくりや、高齢者の社会参画と介護予防を促進してまいります。加えて、生活に困窮する方の自立に向けて、新たに家計改善への支援に取り組んでまいります。
また、ユニバーサルデザインや男女共同参画を推進することで、一人ひとりのあらゆる多様性が尊重された、健やかで思いやりのある成熟した地域社会を形成してまいります。
さらに、市民生活に欠くことのできないごみ処理については、会津若松地方広域市町村圏整備組合において整備予定のごみ焼却施設の規模縮減に併せて、ごみ処理基本計画に定めたごみ削減目標の達成に向けて、新たなリサイクル品目として古布の収集を開始するなど、市民の皆様や事業者の方々と一体となって、ごみの減量化に取り組んでまいります。
( 政策目標4 安全、快適な基盤づくり)
4点目は、「安全、快適な基盤づくり」であります。
市民生活の快適性の向上や、安全・安心な暮らしの実現に向けて、引き続き地域防災や除排雪への対応といった、災害などへの備えの強化と、都市計画や道路、上下水道、公共交通、景観、情報通信といった、地域活力を支える都市環境の維持・向上に取り組んでまいります。
はじめに、災害への備えについては、風水害の被害が想定される地区の住民へ、確実に避難情報等を伝達するために、新たに固定電話への情報発信を開始いたします。また、降雨による溢水の常襲箇所の解消を目指して、雨水幹線の整備を推進してまいります。さらに、雪対策については、除雪機械保有者の掘り起こしや除雪事業者への適切な費用負担、除雪オペレーターの育成支援により、官民が連携して除雪体制を維持し、雪に強いまちを構築してまいります。
次に、公共交通については、感染症による利用者減少に加えて、デジタル化・オンライン化の拡大による人の移動の減少や密を避けるなどの行動変容により、取り巻く環境が大きく変化していることから、今後の鉄道やバスの計画策定作業を通して、持続可能なあり方を見定めてまいります。さらに、高齢者や免許返納者の移動支援については、路線バスを補完する移動手段の確保に向けて、これまで地域住民と連携して取り組んできた住民主体のコミュニティ交通の横展開と、AIオンデマンドバスや相乗り型タクシー、さらには、様々な交通手段を繋いで利便性を高めるMaaSの実装に向け、継続して取り組んでまいります。
( 政策目標5 豊かで魅力ある地域づくり)
5点目は、「豊かで魅力ある地域づくり」であります。
交流人口や定住人口が増加する豊かで魅力ある地域づくりに向けて、まちの拠点の整備など地域活力の創造・再生の取組を進めるとともに、安全で適切な公共施設の運営や健全な財政基盤の確立など、社会の変化に対応した行財政運営に取り組んでまいります。
はじめに、定住・二地域居住については、地方回帰の流れが加速していることから、引き続き、相談会の開催など就業支援を軸とした移住希望者への支援と、スマートシティAiCT入居者をはじめとした移住者の定着に向けたフォローアップに取り組んでまいります。
さらに、新たな拠点を整備し、移住やワーケーション、テレワークなどの一体的な情報発信と、移住希望者と地域とのつながりづくりを図ってまいります。
また、郷土の魅力に気づいていただくことを目的とした市民向けシティプロモーションについては、認知度が向上していることから、継続して取り組むことで、市民の皆様自らが、郷土に住み、愛着を持ち、故郷(ふるさと)を良くしていこうという自負心である「シビックプライド」を醸成し、若者の地元定着へと繋げてまいります。
一方、本市の賑わいと活気の創出に向けたまちの拠点づくりのうち、市役所庁舎の整備については、令和7年度までの事業完了に向け、建築工事施工予定者を選定し、技術的な協議を行いながら設計を進めるとともに、令和4年度の仮庁舎への移転に向けた準備を進めてまいります。また、会津若松駅前の基盤整備については、事業実施に関する基本協定締結に向けて関係事業者との合意形成を図ってまいります。さらに、県立病院跡地の利活用については、県による土壌の調査・除去等と並行し、庁内における基本構想の精査と具体的検討を進めてまいります。
次に、行政運営については、第7次総合計画が令和3年度末で前期5年を経過することから、達成状況等についての中間評価を通して、今後の着実な推進につなげてまいります。また、社会の変化に対応しながら、求められる行政サービスを提供し続けるため、「未来の働き方」の創造に向けた働き方の意識・業務・制度の一体的な改革に取り組んでまいります。さらに、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションに対応した行政サービスの利便性向上に向けて、マイナンバーカードの更なる普及拡大に取り組むとともに、行政手続きのデジタル化・オンライン化、業務のペーパーレス化、テレワークの拡充等によるデジタル・ガバメントを推進してまいります。
また、財政については、感染症による影響を踏まえながら、中期財政見通しの策定による歳入歳出フレームの把握と、令和4年度からの新たな市債管理ルールの検討を通して、緊急的に必要となる財政出動や将来に向けた公共投資にも対応できる健全な財政運営を図ってまいります。
【結び】
以上、第7次総合計画に基づくまちづくりの推進と市政運営の基本的な考え方について申し述べてまいりましたが、すべての政策目標に共通したまちづくりのコンセプトが、「スマートシティ会津若松」の推進であり、これにより実現しようとしているのが本市の地方創生であります。
平成25年2月、「スマートシティ会津若松」を掲げて以降、初期においては、HEMS、あいべあ、GIS、電気自動車、V2H、オープンデータ、コンビニ交付サービス、簡単ゆびナビ、観光・防災Wi-Fi、太陽光発電、アナリティクス人材育成などに他に先駆けて取り組み、国が地方創生を打ち出して以降は官民連携により運動量を高めながら、養液土耕システム、サテライトオフィス、デジタル未来アート、まちなかWi-Fi、会津若松+(プラス)、デジタルDMO、地域コミュニティポイント、母子健康情報、あいづっこ+(プラス)、除雪車ナビなど、分野を拡大し、実証から実装を意識しながら取り組み、さらには、みなとチャンネル、電子黒板、ICTオフィス環境整備、農業用ドローン、水田水管理システム、オンライン診療、MaaSなど、様々な分野において、試行と改善を繰り返しながら、多種多様な事業に取り組んでまいりました。
この地道な取組により、「スマートシティ会津若松」による利便性や生産性の向上を実感いただく方も徐々に増えて、取組への理解も広がり、スマートシティAiCTにおけるICT産業の集積をはじめとして、新たな企業の立地、雇用の創出、移住者の増加など、今では、本市経済の一端を担うまでになりました。
国は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」において、ポストコロナ時代の「新たな日常」構築の原動力として、デジタル化への集中投資と実装を図るとし、具体的には、デジタル・ガバメントの断行やスマートシティの社会実装の加速を掲げています。また、これらの社会変革に取り組まなければ、将来にわたり日本が世界から取り残され、埋没してしまいかねないとの、切迫した危機意識を示しています。
昨年表明させていただいたスーパーシティ構想への挑戦は、まさに、同じ思いに基づくものであります。
スーパーシティ構想への挑戦を通して、改めて少子化や高齢化、人口減少といった地域課題に向き合い、他地域に先駆けた最先端技術の社会実装と規制改革により、生活の利便性向上や、農林、商工、観光、交通、建設といった地域産業の生産性向上、さらには、業務やサービスのあり方自体も新しいものへと変革させることで、スマートシティの取組を更に拡大してまいります。
これにより、本市が地方創生の到達点として掲げる、将来にわたって、暮らしやすく、魅力的な「しごと」があり、住み続けることのできる「豊かな社会」を実現すべく、挑戦してまいります。
これら5つの政策目標とスマートシティの取組については、本市に住み集い、活動されているすべての皆様と、それぞれの強みや特性を活かして取り組んでまいります。また、会津地域共通の課題に対しては、県や管内の市町村、民間団体等と連携し、オール会津で取り組んでまいります。
そして、これらすべての取組を通して、本市のみならず会津地域全体の発展へと繋げていくことで、市民の皆様に、会津に生まれて良かった、会津に住んで良かったと思っていただき、さらには、子どもたちに、会津に残って、会津へ帰って、共に働いていこうと、自信を持って伝えることができるまちづくりを進めてまいります。
何卒、市民の皆様並びに議員の皆様におかれましては、引き続き市政運営について、一層のご支援とご協力を賜りますよう、心から念願申し上げます。
お問い合わせ
- 会津若松市役所 企画調整課 企画政策グループ
- 電話:0242-39-1201
- FAX:0242-39-1400
メール