第1章 計画策定にあたって 1 地域福祉・地域福祉活動計画の策定について ⑴ 背景及び趣旨 我が国においては、少子高齢化の進行による人口減少、家族のつながりや近所づきあい等の希薄化、価値観の多様化、雇用環境の変化等の多様な要因により、社会経済情勢が大きく変化しています。 それにより本市においては、高齢者単身世帯や生活困窮世帯の増加、自殺や孤立死、ひきこもりなどの社会的孤立、ダブルケアや8050問題、虐待など、既存の制度だけでは十分な対応ができない、複雑化・複合化した様々な「地域生活課題」が生じています。 このような状況のもと、本市においては、「スマートシティ会津若松」を掲げ、健康や福祉、教育、防災、エネルギー、交通、環境など様々な分野でICTをツールとした取組を推進し、「ICT関連産業の集積によるしごとづくり」、「ICTを活用した生活の利便性向上」、「データ分析を活用したまちの見える化」を進めることによって、人口減少に歯止めをかけ「住み続けることのできるまち」の実現を目指してきました。また福祉分野においては、平成28年3月に市において会津若松市地域福祉計画(以下「第1期地域福祉計画」)を、市社会福祉協議会においては、社会福祉法人会津若松市社会福祉協議会地域福祉活動計画(以下「第1期地域福祉活動計画」)を策定し、地域生活課題の解決や人口減少の克服、地方創生の推進に取り組んできました。 市や社会福祉協議会では、引き続き行政と地域住民、各種団体、企業、専門職などの多様な主体の力を十分に引き出せるような環境づくりに努めていくとともに、地域住民等が、自助、互助、共助、公助を意識しながら主体的にまちづくりに参加することで、地域の多様な課題の解決に必要な仕組みづくりの推進や支え合いによる「地域共生社会」の実現に向け、地域福祉計画及び地域福祉活動計画を推進していきます。 ⑵ 国の動き 国においては、平成12年に社会福祉法を改正し、新たに「地域福祉」の考えを導入し、家庭や地域の中で障がいの有無や年齢等にかかわらず、個人の人としての尊厳を尊重し、誰もが地域の中で安心して暮らせるような支え合いの仕組みづくりの必要性を明確にしました。 平成27年9月には、誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現に向けて「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」が示され、平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に「地域共生社会」が盛り込まれました。その後、地域共生社会の実現に向けて、平成28年7月に「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」が設置され、同年10月には「地域における住民主体の課題解決強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」が設置され、検討が進められました。平成29年6月には、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の公布により社会福祉法が改正され、平成30年4月に施行されました。 令和元年5月には、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会検討会)」が設置され、地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制の構築について検討されました。それを踏まえ「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」が令和2年6月に公布され、令和3年4月に改正社会福祉法が施行されます。 また、成年後見制度は、認知症、知的障がいその他の精神上の障がいがあることにより財産の管理や日常生活等に支障がある人たちを支える重要な手段であるにもかかわらず、十分に利用されていない状況となっていました。 国においては、こうした状況を踏まえ「成年後見制度の利用の促進に関する法律」を平成28年4月に公布し、翌5月に施行しました。成年後見制度の利用の促進には、市町村の取組が不可欠であることから、同法において「成年後見制度利用促進基本計画」を勘案し、当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な市町村計画を定めるよう努めることとされました。 ⑶ 地域福祉とは 地域福祉とは、『住み慣れた地域で、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現を目指し、地域住民等との連携のもと、ともに支え合いながら、それぞれの地域における地域生活課題を解決する』という考え方です。 多様化する地域生活課題に対しては、自分で解決する問題なのか(自助)、地域の協力で解決する問題なのか(互助)、専門職や行政の支援が必要な問題なのか(共助・公助)を考え、それぞれに何ができるかという視点で、地域全体が力を合わせて課題解決に取り組む地域福祉の考え方が必要です。 ⑷ 地域共生社会とは 地域共生社会とは、制度や分野による「縦割り」や「受け手」や「支え手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがいを創っていく社会をいいます。 ⑸ 地域福祉と持続可能な開発目標(SDGs) SDGs(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年(平成27年)9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年(令和12年)までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成されています。 地域福祉においてもSDGsの視点を持って、地域生活課題に対応していく必要があります。 2 地域福祉計画・地域福祉活動計画について ⑴ 計画の位置づけ 「会津若松市地域福祉計画」は、本市のまちづくりの最上位計画である「会津若松市第7次総合計画」の健康福祉分野の政策「健やかで思いやりのある地域社会の形成」や子ども・子育て分野の施策「次代を創る子どもたちの育成」を実現するための基盤として、高齢者、障がい者、子ども・子育て、健康づくりといった福祉分野における上位計画に位置付け、共通の理念と取組を定めることで、各分野横断の地域住民等が参画する地域福祉の推進によって、地域生活課題の解決を図るべく、社会福祉法第107条の規定に基づき行政が策定するものです。 「社会福祉法人会津若松市社会福祉協議会地域福祉活動計画」は、社会福祉法第109条に規定する民間組織である社会福祉協議会が、地域住民や関係機関、社会福祉協議会の連携による地域福祉活動の実践に向け、社会福祉協議会が策定するもので、社会福祉協議会の活動の指針となるものです。 本市の地域福祉の推進を進めていく上で、市と社会福祉協議会が同じ方向を目指し、連携していくことが必要であることから、今回、両計画を一体として策定するものです。 また、本市には、健康福祉分野の計画以外にも、市民一人ひとりの生活に関わる関連分野の計画があることから、各計画との連携を図り、住み慣れた地域で誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に向け、地域福祉を推進していきます。 ⑵ 計画の構成 地域福祉計画は、第1章から第5章までと第7章及び第8章で構成されます。 また、福祉サービスと成年後見制度などの必要な支援を包括的に提供する必要があることから、「成年後見制度利用促進基本計画」を包含します。 地域福祉活動計画は、第1章から第6章までと第8章から構成されます。 ⑶ 計画期間 令和3年度から令和7年度までの5年間 計画期間は、令和3年度から令和7年度までの5年間としておりますが、計画の推進にあたっては、社会情勢の変化や法制度の改正、さらには本市における地域の実情等を十分に踏まえ、計画期間内においても、次期計画の策定に向け、検証及び見直しを適宜行っていきます。 ⑷ 計画の考え方と圏域 本市においては約383㎢の面積に約12万人の住民が生活していますが、地域ごとに抱える生活課題や福祉課題は様々です。こうした地域生活課題の解決を図るために地域住民、行政、社会福祉関係団体等の各々に期待される取組や、求められる取組、各々の協力体制のあり方等を考える上では、地域住民の生活範囲に応じた活動圏域を意識していくことが重要となります。 本計画においては、地域住民を中心として、最も小さな「隣近所等」を最少範囲とし、そこから「町内会等」、「地区区長会・地区社会福祉協議会等」、「地域包括支援センター圏域」、「市全域」、「県、会津広域圏」と徐々に広がる6つの重層的な活動圏域を想定しています。例えば、「隣近所等」の範囲では、近隣住民同士が顔見知りであることや、地域サロン活動等に代表されるように、目的を共有して活動を行う任意団体等があることから、比較的、住民同士の協力や支え合いによって、身近な問題には対応しやすいのですが、複雑かつ大きな課題は、人手や財源不足等の要因により、解決が困難となる場合があります。こうした場合、「隣近所等」よりも広範囲な「町内会等」や「地区区長会、地区社会福祉協議会等」にまで圏域を広げ、より多くの地域住民の参画を促していくことや、公的なサービスの度合いを高めていくことで課題の解決へとつながる場合があります。 また、これまで実施したアンケートや意識調査では、「隣近所等」から「町内会等」にかけた範囲が、日常生活や地域における活動を意識した場合に、最も身近な活動圏域と実感しているという意見が多かったことから、今後はこうした点も考慮し、地域福祉活動の基盤づくりを進めていきます。 ⑸ 計画策定に向けた取組 本計画は、令和元年度から令和2年度までの2年をかけて策定に取り組んできました。策定に当たり、市民アンケートやパブリック・コメントを行い、地域住民等の意見を反映しました。 また、平成28年度からの第1期地域福祉計画の推進の中で取り組んできた地域ケア会議を始めとした様々な場における意見交換の内容も数多く反映されています。 これは、今後、行政とともに地域福祉の推進を担っていくことが期待されている地域住民等の多様な主体の意見を反映することで、計画の実効性を高めていく必要があると考えたからです。 平成28年度から平成30年度まで 地域ケア会議等に出席し、地域の現状や固有の課題の把握、地域福祉の周知・広報を行いました。 令和元年度 地域福祉計画等推進会議を開催し、専門的見地から意見をいただきました。 地域福祉を考えるアンケートを実施し、地域の課題や現状、第1期地域福祉計画の策定後の意識変化の把握を行いました。 地域ケア会議等に出席し、地域の現状や固有の課題の把握、地域福祉の周知・広報を行いました。 市役所内の横断的な会議を開催し、多様な視点からの意見交換を行いました。 令和2年度 地域福祉計画等推進会議、障がい福祉計画策定調整会議、介護保険運営協議会を開催し、専門的見地から意見をいただきました。 地域ケア会議等に出席し、地域の現状や固有の課題の把握、地域福祉の周知・広報を行いました。 パブリック・コメントを行い、計画への意見をいただきました。 市役所内の横断的な会議を開催し、多様な視点からの意見交換を行いました。