公開日 2016年03月17日
更新日 2018年12月12日
Q17:放射線の影響をなるべく抑えるためには、福島県産の農林水産物は避けた方が良いですか?
平成26年11月13日更新
平成28年3月18日内容一部修正
回答
始めに結論を言いますと、そのようなことをする必要は全くありません。
その訳を以下に述べます。
一番目の理由としては、福島県では食用とするあらゆる種類の農林水産物で放射性セシウムを含んでいるかどうかの検査がなされていることがあります。
これにより基準値を超える食材は市場に出回らないように管理されており、現在ではキノコなど野生のもの以外の栽培作物および海産物で放射性セシウムが検出されることはほとんどない状態となっています(注1)。
二番目の理由としては、スーパーマーケットの食材や一般家庭の食事などの放射性物質調査が行われていることがあります。
厚生労働省では、食料品についてマーケットバスケット調査を行なってきていますが、それによると、事故のあった平成23年の9月~11月の福島県の流通食品調査でも内部被ばく線量は年間0.019ミリシーベルトでした(注2)。
また、福島県の生活協同組合では、同じ平成23年秋に調理後の食事の調査を実施しましたが、放射性セシウムが含まれていたのは27例中3例で、最大で1 キロ当たり13 ベクレルでした。この食事を1年間食べ続けた場合でも内部被ばく線量は0.083ミリシーベルトで食品中の放射性物質の新たな基準である年間1ミリシーベルトを大きく下回っています(注3)。このような状況でしたし、一番目の理由で述べたように、現在では放射性セシウムを含んだ食材はほとんど出回っていないので、セシウムによる線量を心配することは無用です。
三番目の理由としては、食材にはもともと自然の放射性物質が含まれており、その影響は放射性セシウムによる影響よりもずっと大きいことです。
自然界には放射性物質であるカリウム40があり、あらゆる食材に1 キロ当たり10~数100 ベクレルほどが含まれています。毎日食べる実際の食事でも1 キロ当たり20~60 ベクレル含まれていて、平成23年の調査でもカリウムによる内部被ばく線量はセシウムによる線量の10倍に相当することが明らかにされています(注3)。このことを考えますと、放射性セシウムの影響はカリウム40と比べて小さく、心配することはありません。
カリウムは生物にとっての必須元素です。自然のカリウムには安定カリウム(カリウム39)と放射性カリウム(カリウム40)がありますが、私たち生物はこれらを識別、弁別して摂取することはできませんので、両方とも体内に入ってきます。「放射線の影響をできるだけ抑える」ことは大切なことですが、自然に存在する放射性物質や放射線を避けて生活することはできませんし、また、それによる健康影響を気にすることはありません。
四番目の理由としては、われわれ人間を含む生物は、新陳代謝によって不要となったものは排出しますし、放射線で傷ついた細胞や遺伝子などは修復する能力を持っていることがあります。
体内に取り込まれた放射性セシウムは蓄積されていつまでも影響するのではなく、数ヶ月程度で体外に排出されます。これは、平成23年9月から南相馬市で約1万人に実施したホールボディカウンターによる検査でも確認されています。(注4)
また、生物の細胞や遺伝子は放射線の障害に対しては修復する能力を持っていて、元の状態を保とうとしています。
このような体の働きを考えると、基準値程度以下の少々の放射性セシウムを心配することはないと言えます。
現在、放射性セシウムによる線量は原発事故直後の半分以下にまで下がっているものの、まだ地表面に残っていることは間違いありません(注5)。
そのセシウムが栽培作物に入ってこない理由を少し説明しておきます。
一つには、農地の除染が行われたこと、自然の風化現象によって流出したり、地中に入って行ったりしてセシウムが減少していること、あるいは農土の入れ替えが行われたことによって、土壌中の放射性セシウム濃度が下がったことがあります。
二つには、セシウムが土壌粒子に吸着していると、ほとんど作物に取り込まれないことがあります。水に溶けているセシウムは吸収されやすいのですが、セシウムは土壌粒子によく結合して固着するので、時間が経つにしたがって水に溶けるセシウムは少なくなります。
三つには、作物の品種によって差があり、わからない点も多いのですが、作物のセシウム吸収率が低いことにあります。
四つには、葉菜や果実などの場合、空気中の放射性物質がその表面に沈着することで汚染することが多いのですが、事故から時間が経つと空気中には放射性物質がほとんどなくなるために、汚染がなくなっていきます。
以上のようなことから、1年目は吸収があったとしても、2年目、3年目になるとさらに少ない量しか吸収されなくなり、急速に作物中の放射性セシウムの量は減ります。
また、植物はカリウムが足りないと化学的性質が似ているセシウムを吸収することがわかってきました。そこでカリウムが不足しないように、カリウムを施肥して、セシウムの吸収を抑える対策なども行われています。
このような理由が重なって、現時点では、栽培作物からはセシウムが検出されないようになっています。
以上のことから市場に流通している食品は、どこの産地でも安心して食べて大丈夫です。
注1:福島県ホームページ/各種放射線モニタリング結果/飲料水・食品の放射性物質に詳しい測定結果が出ています。
なお、野生のキノコの放射性セシウムが高い理由は、Q&A12で説明していますので、参照ください。
また、キノコの放射性物質も徐々に減少しており、会津では基準値内のキノコが多くなっています。野生のキノコ、山菜等は市役所で無料で放射性物質濃度を測定していますので、食べるときは測定されることをお勧めします。詳細はこちら※(健康増進課のホームページ)
注2:マーケットバスケット調査は厚生労働省が行っている調査で、通常のモニタリング検査(個々の⾷品ごとの検査)とは異なり、市販の様々な⾷品を組み合わせ、⾷品に応じて煮る、焼く等の調理を加えたものをサンプルとして検査を⾏います。
平成25年9-10月の全国13県(福島県は3地域で、全15地域)での流通食品の検査では、0.0008~0.0027mSv/年で、基準である1 mSv/年の1%以下となっています。
ホームページアドレス http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/shokuhin.html
平成23年9-11調査結果(リンク) ・ 平成25年9-10調査結果(リンク)
注3:平成23年コープ福島(生活協働組合)による測定(12月27日放射線審議会資料より) ※この調査は陰膳方式調査と呼ばれ、現在、コープふくしまのホームページに掲載されている2011年度の調査結果は、放射線審議会の資料としてまとめたものと、その後平成24年3月末までに実施したもの合わせて100軒の結果です。また、平成25年11月~26年2月の調査では1キロ当たり1ベクレル以上を検出したのは100軒中4軒、最大2.6ベクレルで、この食事を1年間食べ続けた場合の内部被ばく線量は0.04ミリシーベルト未満とされています。
ホームページアドレス http://www.fukushima.coop/300_benri/380_sinsai_torikumi.html
注4:平成23年9月から南相馬市で実施したホールボディカウンターによる検査では、約1万人が受診し、2千人を超える方から最大数千ベクレルの放射性セシウムが検出されました。しかし、セシウムの検出量が多かった方の4~6ヶ月後の再検査では、ほとんどの方でセシウムの濃度が低下しており、特に子供は低下の割合が大きかったということです。また、平成24年3月時点で子どもの99%、大人の90%以上で放射性セシウムは検出されなくなっています。
ホームページアドレス http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,2033,61,344,html
注5:放射性セシウムにはセシウム134とセシウム137がありますが、セシウム134は半減期が2.1年と短く、平成26年11月現在、1/3程度まで減っています。一方、セシウム137は30年の半減期なので、まだほとんど残っています。両方を合わせた線量は、物理的な減衰だけでみると、事故直後の55 %程度まで減っていることになりますが、実際には風化作用や人間の活動によって移動しますので、半分以下となっています。
【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生
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