公開日 2014年02月28日
更新日 2018年12月12日
Q14:インターネットのサイトに、福島県の土壌中のプルトニウム濃度を表した地図が掲載されていて、福島県内でも会津若松市付近が高いようですが、健康への影響はありませんか。
回答
はじめに結論を言いますと、健康に影響はありません。
私が確認したインターネットの個人ブログにある土壌中のプルトニウム濃度を表した地図は、原子力災害対策現地本部および福島県災害対策本部による調査結果を図に表わしたもの※1が元になっているようで、確かに会津若松市付近は少し高くなっています。図の作成者は記されていませんが、災害対策本部の図と比べてもほぼ正しいようです。
※1原子力災害対策本部のプルトニウム調査結果(H23.11.29発表).pdf(599KB)
図中のプルトニウムは、福島第一原発近くの大熊町夫沢での値以外はすべて、事故以前からあるプルトニウム、すなわち米・ソ・中国等によって過去に行われた原爆実験に由来するもので、会津地方はもちろん日本全国、世界各地で測定されるものです。プルトニウムの測定は、福島第一原発事故以前から毎年行われていて、それらのデータをきちんと分析した結果であることが調査結果に明記されています。
災害対策本部等の発表では、平成23年8月10日~10月13日の期間に、県内7方部の合計48カ所で土壌を採取して分析した結果、プルトニウム238は検出限界以下(ND)~2.18 Bq/m2、プルトニウム239+240 はND~63.8 Bq/m2 となっています。
一方、国が昭和53年から平成20年までに行った全国のプルトニウム調査では、その最大値はプルトニウム238が8.0 Bq/m2、プルトニウム239+240が220 Bq/m2で、今回の測定値はこれらの値を下回っていることから、災害対策本部では、福島県で検出されたプルトニウム (大熊町夫沢を除く) は福島第一原発事故で放出されたものではない、と判断した理由のひとつとしています。なお、詳細は原子力災害対策本部のプルトニウム調査結果.pdf(599KB)を見てください。
では、この値が健康に問題となるかということですが、プルトニウムの内部被ばくによる発がん性ですが、過去の事故によるデータや動物実験から明らかにされた値では、成人では体内に770 Bq(プルトニウム239で0.3マイクログラムに相当)以上摂取しなければ発がんしないとされています。
環境中のプルトニウムは大部分が酸化プルトニウムとして存在していますが、これは非常に水に溶け難く、植物にもほとんど吸収されませんし、皮膚に付いても簡単に吸収されず、人が口から摂取しても吸収され難く、ほとんどは排泄されてしまいます。
呼吸によるプルトニウム摂取の健康影響は大きいのですが、土壌中のプルトニウムが蒸発することはなく、風で舞い上がる量も、1mの高さで地表面にある量の1万分の1程度と考えられ、ごくわずかですので、呼吸による摂取も考えなくて良いレベルです。
このようなこともあり、福島第一原発事故以前の調査では60kgの体重の人で、プルトニウムは1.2Bq程度の検出となっています。
現在も土壌中のプルトニウム濃度は事故以前と変わらないので、人体には数Bq程度のプルトニウムがあると考えられますが、この量は人体に影響が出るとされた770Bqの100分の1程度の量なので、健康に影響が出るレベルではありません。
また、プルトニウムからはガンマ線やエックス線が出ますがエネルギーが低く、極めてわずかな量しか出ませんので、外部被ばくの影響を考える必要はありません。
今回、私が確認した個人ブログでは、原子力災害対策本部の調査結果に原発事故由来でないことが記されているにもかかわらず、そのことを明記しないで原発事故由来のセシウムの分布と違っていると書いて、読む人にあたかも原発由来のプルトニウムがあり、それを隠しているかのような印象を与えるような書き方になっていました。
文献の内容をよく理解せずに引用したのか、自分たちに都合の悪い情報を隠したのかは判りませんが、個人ブログやインターネットサイトには読む人に誤解を与える内容の記載もあるので、注意が必要です。
※プルトニウムは呼吸により摂取した場合、肺にしばらく留まるので、健康への影響は大きくなりますが、数百から1万Bq程度のプルトニウムを吸い込んだ人のその後を調査したところ、数十年後にがんを発症した人の数はわずかで、プルトニウムによるものかどうかは確認できないとされています。
また、プルトニウムには重金属としての化学毒性もありますが、放射線により人体に影響がある値より、ずっと多くの量を摂取しなければ影響は出ないので、今回の測定値では心配する必要はありません。
【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生
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