公開日 2013年09月19日
更新日 2018年12月12日
Q10:チェルノブイリ原発事故では健康影響が出ているそうですが、放射能汚染はどのようなものですか。福島第一原発事故と比べるとどうですか。
回答
チェルノブイリ原発事故は、1986年4月26日午前1時43分過ぎに起きました。
定期点検で原子炉を停止する機会を利用して、通常の業務に入っていない低出力の工学試験を行いましたが、この時、安全システムが切られて原子炉が不安定な運転となり、ほどなく原子炉の出力が急上昇して制御不能となりました。その結果、高温となった燃料体と冷却水の接触で水蒸気爆発を何度も起こし、燃料棒の破壊で大量の放射性物質が大気中に放出され、北半球全域で微量の放射性物質が観測されるという大惨事となりました。
放射性物質の放出は約10日間続きましたが、環境中に放出された主な放射性物質は、ヨウ素131が1,760 PBq、セシウム137が85 PBq、ストロンチウム90が10 PBq, プルトニウム239が0.013 PBq等でした。
一方、福島第一原発事故では原子炉自体は爆発しておらず、放出されたのはヨウ素131が160 PBq、セシウム137が15 PBq、ストロンチウム90が0.14 PBqなどで、プルトニウム239は非揮発性のためにごく微量でした。 放出量を比較すると、今回の事故によるセシウム137は、チェルノブイリの約1/6になります。
○主な放射性物質放出量の比較
放射性物質放出量 | ヨウ素131 | セシウム137 | ストロンチウム90 | プルトニウム239 |
チェルノブイリ | 1,760PBq | 85PBq | 10PBq | 0.013PBq |
福島第一 | 160PBq | 15PBq | 0.14PBq | 極微量 |
※1PBq(1ペタベクレル)は1,000,000,000,000,000Bq(1000兆ベクレル)です。
※この他にゼノン(キセノン)6,500PBq等放出していますが、希ガスで半減期が短く、健康への影響がほとんどないため省略しています。
チェルノブイリ原発事故で汚染された範囲は、半径50キロ内のほぼ全域と、北東方向のベラルーシとロシア国境付近150~250キロの地域で、そこは1,500 kBq/m2を超え、中欧、東欧、ロシアの広い範囲では2 kBq/m2を超える放射性物質の沈着がありました。
一方、福島原発事故では、平成23年7月時点のセシウムの沈着量は、半径約10キロ内と北西方向に50キロの範囲(ほぼ帰還困難区域と居住制限区域)では1,000kBq/㎡以上ですが、会津地方では10~60kBq/㎡程度になります。
※経済産業省のチェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故の比較はこちら
経済産業省ホームページ「年間20ミリシーベルトの基準について」
事故後の経過ですが、チェルノブイリ原発事故が発生した26日の昼頃には、原子炉の町プリピャチの市民(ほとんどが原発関連者)は、事故を知っていましたが、避難等の指示はなく、市民はいつも通りの生活をしていました。 27日になって市内の線量が上がり始め、午前7時には毎時2,000~6,000μSv ( 2~6 mSv ) が測定されるに及んで避難勧告が出され、バス1,200台で45,000人が避難しました。
しかし、プリピャチ市以外にはしばらくは何も知らされず、30キロ圏内の住民の強制避難が始まったのは1週間後の5月2日からで、116,000人が避難しました。
これらの避難者は25年が経った今も公的には戻れていません。
その後、ソ連政府によって避難区域等の設定がされ、現在は強制避難区域が年間40 mSv超え、強制移住区域が年間40~15 mSv、移住可能区域が年間15~5 mSv、管理必要区域が年間5~1 mSvとなっていますが、最初からこの値ではなく、段階的に下げてこの値になりました。 なお、福島第一原発事故の現在の避難等区分は、帰還困難区域が年間50 mSv超え、居住制限区域は年間20~50 mSv、避難指示解除準備区域は年間20 mSv以下となっています。
※本来のチェルノブイリの避難区域設定単位はCi/k㎡ですが、判り易くおよそのmSvに換算しています。また、汚染状況や避難基準等については上記の経済産業省「年間20ミリシーベルトの基準について」をご覧ください。
チェルノブイリ原発事故の健康影響については、国連科学委員会2008年報告で次のように記されています。
原子力発電所職員と緊急作業者のうち、高線量被ばくをうけた134名中28人が被ばく後間もなく死亡し、その後に死亡した人の死亡原因は様々で放射線被ばくとは関連が薄いと見られていますが、生存者においては皮膚障害と白内障は主要な影響とされています。また、緊急作業者以外の数十万に上る作業者では、白血病と白内障の患者が増えていますが、心血管疾患と脳血管疾患、また、それに関連した死亡などについては、放射線による影響だという証拠はないとしています。
避難した人で、チェルノブイリ原発事故時、小児から青年だった人々の間で、6,000人以上の甲状腺がんが見られ、そのうち2005年までに15人が死亡していますが、事故後の迅速な対応がなかったことで、ヨウ素131に汚染された牛乳の摂取(最初の2~3週間)による甲状腺の平均被ばく線量が約500 mSvと推定され、これが主な原因とされています。
一方、福島第一原発事故での甲状腺被ばく線量は、放射線医学総合研究所などの調査で、最大でほぼ50 mSvと見られています。
チェルノブイリ原発事故では、避難により日常生活が失われた精神的苦痛や経済的な不安などから、食事習慣、喫煙、アルコール摂取などの生活様式が変わり、自殺や寿命の短縮などが認められています。
しかし、一般公衆では、※1大多数が自然の放射線被ばく量の数倍程度の範囲なので、健康影響について放射線被ばくを原因とする説得力のある証拠は無いとしており、ほとんどの人の将来の健康には、放射線の影響はないだろうとしています。
※1旧ソ連の汚染地域の約600万人の平均実効線量は1986~2005年で約9 mSv
※「国連科学委員会報告2008年チェルノブイリ原発事故の放射線の健康影響について」は国立がん研究センターのホームページに掲載されています。
なお、チェルノブイリでの放射線被ばくについては、甲状腺を除いた内部被ばくは外部被ばくより影響が小さいとされていますが、キノコ類、ベリー類、狩猟動物、トナカイの放射線レベルが高く、食べることが制限されており、また、森林に立入ることも制限されています。
○補助単位の説明
K (キロ) 1,000 千
M (メガ) 1,000,000 百万
G (ギガ) 1,000,000,000 10億
T (テラ) 1,000,000,000,000 1兆
P (ペタ) 1,000,000,000,000,000 1000兆
【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生
お問い合わせ
- 会津若松市役所 環境生活課
- 電話:0242-39-1221
- FAX:0242-39-1420
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