放射線Q&A8:今でも放射性物質が空気中に漂っているのですか?

公開日 2013年07月05日

更新日 2018年12月12日

Q8:毎日、テレビなどで「大気中の放射線量は毎時○○マイクロシーベルトです」と言っていますが、どういう意味なのでしょうか。今でも放射性物質は空気中に漂っているのでしょうか。

 

 

回答

 

 今も、放射性物質が空気中を漂っているのかどうか、本当はどうなのでしょう。結論を先に言いますと、福島原発事故に由来する放射性物質は、今は空気中にはありません。

 福島第一原発の爆発で空気中に飛び散った塵状の放射性物質は、風で各地に流された後、雨や雪で洗い落とされて地上に降り、その場で放射線を出しているのです。

 その証拠に、福島県内にある3,000台以上の放射線の自動計測器は、どこも時間的に変化せず、ほぼ一定の値を示しています。(もし空気中に放射性物質があれば、空気は動いていますので、放射線量は大きく変化します。)また、大気中の放射性物質を調べても、ほとんど検出されません。

 

 

 放射線の話をする時に、「放射性物質」や「放射能」、「放射線」など似た言葉が幾つもあり、また報道でも時々首をかしげるような言われ方をしていて、誤った理解にもなりかねませんので、少し言葉を整理してみることにしましょう。

 

 

放射性物質とは

  放射線を出す物質です。物質ですから、土や水、食物、人、車などと同じように、形も重さもありますが、物質の元である原子の一つ一つは、大変小さく目に見えません。

 

 原発事故で飛んできた放射性セシウムも放射性物質の一つで、今でも地面や樹木等に付着して放射線を出していますが、量がわずかなうえに散らばっているので見えませんし、放射線を測っても放射性セシウムがどこにあるか確認するのは簡単ではありません。

 

 

放射線とは

 放射性物質から出てくる粒子や光子のほか、宇宙から来る宇宙線などがあります。

 

 粒子は、大きさとしては原子より小さく、光速に近いスピードで動いていますが、空気や物体の中を飛んでいる間に物質とぶつかり、スピードが落ちて大気中の酸素などと同じようなスピードになってしまうと、もう「放射線」ではありません。

 

光子は電磁波とも言い、テレビの電波、電子レンジのマイクロ波、光、ガンマ線などは同じ仲間です。それぞれエネルギー(または波長)が違い、物質に与える影響が違いますが、ガンマ線のように高いエネルギーの光子は、物質に当たると物質を変化させることがありますので、人に当たった場合は注意が必要ということになります。光子も物質に当たるとそこで消えてしまい、残ることはありません。

 

粒子にしろ、光子にしろ、放射線として空気中に漂うことはありませんし、人にうつることもありません。

 

 

放射能とは

 放射性物質が放射線をどれだけ出すか、という能力を表わす言葉です。また同時に、放射性物質の強さも表していて、「ベクレル」で示されます。

 

 

放射線量とは

 正確に言うと物質が放射線から受けエネルギー量のことを言いますが、人や空気、水など、物質が違うと同じ放射線でも受けるエネルギーが違うため、物質名を言う必要があります。大気の場合は、「大気または大気中の放射線量」と言ったり、「環境放射線量」あるいは「空間線量」と言いますが、意味の正確さや呼び易さから「空間線量」が良いように思います。また、放射線量は、略して「線量」とよく言われます。

 

 テレビなどで最もよく聞く「毎時○○マイクロシーベルト」ですが、これは「空間線量率」と言って、単位時間当たりに受ける放射線量のことです。モニタリングポストや線量計の測定値はこの空間線量率を表わしていて、1時間当たり(毎時)の値がよく使われます。ちなみにモニタリングポストや線量計で測定しているのはほとんどガンマ線だけです。

 

  また、ガンマ線によって地上1メートル(場合によっては、地上50センチなど)の高さの空気に与えられたエネルギーを、そこに人がいた場合に与えられるエネルギーに直した放射線量は「実効線量」と言います。

 

 

 時折、大気中の放射能濃度」と言ったことが報道される場合がありますが、この場合の放射能濃度はまさしく「大気中の放射性物質の濃度」を意味しています。

 これはフィルタなどで大気中の塵を捕集して、その放射能を計測することにより、大気中の放射性物質濃度として求めたものです。

 

 

 

 

 このように放射線に関する用語には似たものがあり、不注意にこれらの言葉を使うと、わかりにくく誤解を与えることにもなりますので、相手に解るように丁寧に説明することが必要です

 

 また、日常の会話などでは、これらの言葉は、なるべく正しく使い、よく聞いて、話す相手がどちらを言っているかに気をつけましょう。

 

 

 

 

 

 

【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生

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