平成31年度施政方針
施政方針とは、新年度における市長の市政運営に対する基本的な考え方について述べたものです。
【はじめに】
本日、平成31年2月市議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様にはご参集を賜り、厚く御礼を申し上げます。
本定例会の開会にあたり、平成31年度会津若松市一般会計予算をはじめとする諸案件のご審議をお願いするとともに、市政執行に取り組む私の所信と施策の大綱を申し述べ、ご理解とご協力を賜りたいと存じます。
【施政にあたっての基本的な認識・考え方】
さて、平成30年は、戊辰150周年の年でありました。「『義』の想い つなげ未来へ-。戊辰150周年。」のもと、幕末の動乱とその後の明治という新しい時代を、ひたむきに生きた会津人の功績とその思いに光をあて、長い歴史の中で培われた精神文化などを再認識するとともに、今後も、これら地域の財産を、より多くの皆様に知っていただき、また次世代へと語り継いでまいる決意を新たにしたところであります。
平成31年は市制施行120周年という節目の年でありますが、あらためて、その意義とこれまでの本市の歴史を振り返り、将来に向けてより一層の市勢発展の契機とするために、これまで市民の皆様と、ともに引き継いできた郷土への思いや先人の功績、私たちの今を未来へ「つなげ」てまいりたく、第7次総合計画に掲げる「ひとが輝くまち」「ともに創るまち」「つなぎ続くまち」の3つのまちづくりのコンセプトに基づき、市政運営に臨んでまいります。
【平成31年度の市政運営の考え方及び取組】
(ひとが輝くまち)
はじめに、「ひとが輝くまち」に向けた取組であります。
私たちの先人は、教育に力を注ぎ、時代が変わろうとも、その姿勢は変わることなく、多くの有為の人材を国内外に送り出してきました。本市が発展していくためにも、地域に誇りを持ち、たくましく生きる人材の育成が、大切であると考えております。
また、将来を担う人材の育成には、子育て世代が安全に安心して子どもを育てることのできる環境をはじめ、魅力ある学習機会の創出や、確かな学力を身につけられる教育環境を整えることが重要であり、将来、本市へ住みたいと希望する方々に対しても大きな魅力になるものと考えております。
そのため、保育所、幼稚園、認定こども園等での利用者負担の軽減を図りながら、国が進める本年10月からの幼児教育・保育の無償化についても着実に実施していくとともに、子ども医療費の18歳までの無料化を継続してまいります。また、多様な子育て支援サービスを提供していくため、次期「子ども・子育て支援事業計画」の策定に向けた取組を進め、安心して子育てが出来る地域の実現に努めてまいります。
さらに、本市独自の学習機会として、「あいづっこ人材育成プロジェクト事業」や「あいづ未来人財育成塾」など、地域や企業などの関係団体と連携した取組を行うことにより、変化する時代にあっても、自分の将来の生き方を考えられる人材を育成してまいります。
子どもたちの自己実現に向けては、確かな学力を身に着けることが必要であり、家庭での学習習慣、読書習慣などの定着に向けて、学校・家庭が一体となった取組を進めていくとともに、次世代の教育環境整備を見据えて、引き続き、プロジェクター付き電子黒板の導入とデジタル教材の充実、そして、その有効活用に向けた指導体制の構築に取り組んでまいります。
また、行仁小学校の改築工事をはじめ、一箕小学校や第五中学校の耐震化を行うとともに、全小中学校の教室等にエアコンの設置を行うことで、子どもたちが安全に安心して学校生活を過ごせるよう、学校施設の整備を計画的に進めてまいります。
これら、次世代を担う子どもたちの教育には、地域の誰もが学ぶ生涯学習の意欲の向上も不可欠であり、地区の公民館などを拠点とした、地域の方々の学習や地域活動を支援することで、「人づくり」「つながりづくり」「地域づくり」を進め、学びと活動の好循環を創出してまいります。
(ともに創るまち)
2点目は、「ともに創るまち」に向けた取組であります。
私たちの生活を取り巻く社会情勢が刻々と変化していく中で、誰もが自分らしく生きることができる、豊かで安心なまちをつくっていくことは大切であり、そのためには市民の皆様をはじめ、地域や企業、行政など、本市で活動を行う、あらゆる主体が共に支えあい、力を合わせて課題を解決していく必要があります。
まず、地域福祉の充実に向けては、地域の皆様や関係団体との協働が不可欠であり、「地域福祉計画」や「高齢者福祉計画・介護保険事業計画」、また「障がい者計画及び障がい福祉計画」と「障がい児福祉計画」に基づき、高齢の方や障がいのある方をはじめ、本市に住む全ての方々が、住み慣れた地域で自分らしく暮らせるよう地域包括ケアシステムのより一層の構築を推進してまいります。
さらに、安心なまちを支える地域の医療の充実に向けては、これまでの取組に加え、地域医療支援病院や医師会と連携し、ICTを活用したオンライン診療の普及に向けた実証事業を支援していくことで、受診者や医師の負担軽減を図り、地域医療サービスの向上に努めてまいります。
次に、防災対策については、「地域防災計画」に基づき防災体制の充実に努め、自助・共助・公助による災害に強いまちづくりを進めてまいります。
そのため、引き続き、共助の要である地域の皆様による自主防災組織の設立を支援してまいります。
また、全国的な社会問題である空家対策については、「空家等対策計画」に基づき、地域や関係団体の方々と連携しながら、その実態の把握や発生の抑制、適正な管理に向けた対応のほか、空家等改修支援事業などにより、利活用対策に取り組んでまいります。
次に、市民の皆様が利用する公共施設や公園、道路や上下水道などの社会基盤については、引き続き「公共施設等総合管理計画」に基づいた取組を進め、将来にわたり持続的で最適な公共サービスを提供していくため、市民の皆様と情報を共有し、各地域における公共施設のあり方について協議してまいります。
また、市民の皆様の生活を支えるためには、移動手段や通信手段の充実も大切な取組と考えております。公共交通対策については、地域の方々や交通事業者と連携し、これまで、金川(かながわ)町(まち)・田園(でんえん)町(ちょう)住民コミュニティバスの取組をはじめ、北会津、河東及び湊地区の公共交通空白エリアの対応を行ってまいりましたが、今後についても地域の実情を踏まえた施策を行うとともに、高齢者の移動支援の充実に向けて、調査、研究を行ってまいります。
さらに、通信手段の整備については、地域間の情報格差解消を目指し、超高速ブロードバンド未整備地域の通信環境改善に向けて、引き続き地域の方々や民間事業者と連携して取り組んでまいります。
以上のように、「ともに創るまち」を実現していくにあたっての主な取組を申し上げましたが、これらの実施においては、自ら考え行動できる自立した主体が必要となります。
そのため、地域づくり組織の構築をはじめ、活動の拠点となる地区公民館などの公共施設の活用及び財政的な支援のあり方の検討などを進め、北会津・河東・湊地区で先行して取り組まれている、地域づくりの経験を活かしながら、本市にあった地域コミュニティのあり方を検討し、その実現が図られるよう努力してまいります。
(つなぎ続くまち)
3点目は、「つなぎ続くまち」に向けた取組であります。
人々が将来も安心して「暮らし続けること」ができ、「暮らし続けたい」と思えるまちをつくっていくためには、くらしを支えるための「しごと」が必要であります。
新たな人の流れと雇用の創出、若者の地元定着を図るため、平成27年度より民間事業者と官民連携で整備してまいりましたICTオフィスについては、エリアの総称を「スマートシティAiCT(アイクト)」に決定し、今年4月の開所に向け、現在、準備を行っているところであり、入居企業の誘致を進めるとともに、当該オフィスが企業や本市の知的資源である会津大学との交流の拠点となることで、産業や雇用などの面で新たな価値の創造の場となるよう努めてまいります。
また、新たな雇用創出に大きな効果のある工業団地整備については、周辺自治体と協力し、県営工業団地の整備を要望していくとともに、本市独自の工業団地整備について、「工業振興計画」を策定する中で検討してまいります。
次に、商工業の振興においては、中小企業等の資金調達の円滑化を支援していくとともに、本定例会に提案している「会津若松市中小企業及び小規模企業振興条例」に基づく補助制度の中で、新規事業に挑戦する意欲のある企業を支援する内容を新たに盛り込むなど、地域経済の好循環が促進される取組を行ってまいります。
また、市民の皆様をはじめ、商店街などの関係団体と連携しながら、「中心市街地活性化基本計画」に掲げる事業を推進していくとともに、次年度が現計画の最終年度であることから、事業成果の検証や社会情勢の変化を踏まえながら、次期計画の策定に取り組んでまいります。
さらに、本市の貴重な地域資源である、漆器や酒造などの地場産業の振興については、全国新酒鑑評会における史上初の金賞受賞数6年連続日本一や、テーブルウェアフェスティバルにおけるコンテストで会津漆器が2年連続受賞するなど、知名度やブランドイメージは確実に向上しており、この機会をさらに活かしながら、海外も見据えた情報発信や新たな販路の掘り起こしを支援していくなど、一層の地域ブランディングの向上に努めてまいります。
さて、本市の基幹産業ともいうべき観光関連産業については、これまでの地域資源を活かした数々の観光誘客対策や教育旅行の誘致施策に加え、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、訪日外国人観光客の増加が期待されることからも、主要なターゲット国であるタイ王国、台湾、欧米等の国別の来訪者のニーズにあわせた観光プロモーションを展開し、受け入れ環境の整備を進めてまいります。
また、これらインバウンド対策をはじめとした観光誘客対策においては、会津地域内はもとより、首都圏の都市や日光市、新潟市などの有力な観光資源を持つ他地域との連携も有効であることから、広域観光周遊ルートの構築などを進め、交流人口のさらなる拡大を図ってまいります。
次に、もう一つの主要な基幹産業である農林業については、森林経営計画に基づく間伐事業の搬出支援や林地台帳の整備などに努め、持続性のある森林整備を推進していくほか、土地改良事業などにより、生産基盤の整備を進め、農業経営の安定化を支援してまいります。
また、園芸栽培や水田の管理へのICTの活用を、さらに推進するとともに、新たに農業用ドローンによる画像分析に基づく農薬・肥料の局所散布の実証事業など、生産性向上の検証を行うことで、農業の持続的発展を図ってまいります。
さらに、本市産米のブランド力を高めていく取組として、コシヒカリの厳選米「AIZ'S-RiCE(アイヅライス)」を昨年商品化したところであり、今年度は首都圏等の小売店における、さらなる販路拡大を図ることで、会津産米の認知度の向上を目指してまいります。
さて、市民の皆様が希望を抱き安心して「暮らし続けること」ができる「まち」は、国内外から多くの人々を引き付け、その交流の中から、新しい価値を創造し続けることができます。
そのため、市民生活の利便性向上や定住人口、交流人口の増加に結びつけるべく、「市役所庁舎の整備」、「会津若松駅前の基盤整備」、「県立病院跡地の利活用」については、将来にわたる本市の発展の要となる重要な事業であり、着実に進めてまいります。
一つ目の市役所庁舎の整備については、今年度策定を進めている庁舎整備の基本計画の内容を、次年度は市民の皆様にお示しし、整備に向けた様々な条件整理を行ってまいります。
また、庁舎整備へのスケジュールとして、概略設計、詳細設計により、本庁舎旧館の保存活用とともに新たな庁舎の建設工事を行い、平成37年度の竣工を目途に取り組んでまいります。
二つ目の会津若松駅前の基盤整備については、本市の玄関口としてふさわしい機能と、地域内外の人・物・情報がつながり、地域の方々に親しまれるまちの拠点とするため、JR東日本をはじめとした関係者と協議しながら、整備に向けた基本構想の策定に取り組んでまいります。
三つ目の県立病院跡地の利活用については、現在策定している「県立病院跡地利活用基本構想」を市民の皆様にお示ししていくとともに、今後の基本計画策定に活かしてまいります。あわせて、用地取得に向けて、県との協議や諸条件の整理を進めてまいります。
さらに、これら多様化する都市の課題への対応として、居住機能や医療、商業施設などの都市機能の誘導を促すため、基本的な方針や施策等を盛り込んだ「立地適正化計画」の策定に取り組んでまいります。
また、持続可能な地域社会を形成するためには、適切な公共サービスの提供に取り組んでいくとともに、特に生活関連社会資本の整備にあたっては、共通課題の解決に向けて、各自治体が一体となって取り組む必要があります。
そのため、会津若松地方広域市町村圏整備組合の新たな廃棄物処理施設などについても適切な整備がなされ、市民の皆様に必要なサービスが滞りなく提供されるよう、一致協力して進めてまいります。
一方、財政運営においては、これまで市債残高の低減や実質公債費比率の改善など、財政の健全化を着実に進めてまいりました。
引き続き、施策の基礎となる財政基盤を堅持するとともに、次世代を担う子どもたちの育成や新しい産業分野への支援など、将来に向けた地域づくりにも積極的に取り組み、健全で持続可能な財政運営を行ってまいります。
【結び】
以上、第7次総合計画に基づくまちづくりの推進、並びに市政運営の基本的な考え方について、申し述べてまいりました。
「平成」を振り返るに、今日に至るまで、冷戦構造の終焉やバブル経済の崩壊、東日本大震災など、私たちを取り巻く情勢は大きく変化し、現在においても、身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながるIoTや、将来の世界を変える人工知能のさらなる発達など、デジタル変革による社会の転換が進行しております。
このような社会の変化の中、私は市長就任以来、「汗働と協働による全員参加のまちづくり」を基本政策に掲げ、市民の皆様の声に耳を傾け、安心して暮らせる会津若松市の創造と再生に全力で取り組んでまいりました。
そして現在、徳久工業団地の完売による数百人規模の雇用の創出や「スマートシティAiCT(アイクト)」への首都圏企業等の新規入居による交流人口の拡大、ICTを活用し農作業の自動化などを図るスマートアグリや、市民の皆様一人ひとりにあった情報を提供する情報プラットフォーム「会津若松+(プラス)」に代表される「スマートシティ会津若松」の具現化、さらには市役所庁舎や会津若松駅前の整備などの大規模事業の取組といった、未来への「希(のぞみ)」につながるものが、かたちとなりつつあります。
幕末の戊辰戦争の荒廃から復興し、今年で市制施行120周年を迎える礎には、秋山清八初代若松市長をはじめ、多くの会津の先人たちが、会津中学校設立に代表されるように藩校日新館から引き継いだ教育と伝統など、地元の「財産」に光をあて、育んできたことはもとより、磐越西線の前身である岩越鉄道の開通への尽力、また、横山武市長が熱意を持って進めた若松城天守閣の再建など、新しいまちづくりに取り組んでこられたように、まさに第7次総合計画の基本理念である「温故創しん」の精神をもって、ふるさとの発展につなげてきた成果であると考えております。
私は、日々進歩する現代であるからこそ、市民の皆様をはじめ、本市に集い活動されている、まちづくりの主体である全ての皆様が「自我作古」の気概を持ち、それぞれの分野で本分を尽くされ、連携していくことが重要であると考えております。
各自の持つ強みや特性を活かした活動をしていくなかで、お互いの運動量が高まりあい、より良いまちづくりに向けての相乗効果や、第7次総合計画の基本理念である「ともに歩み、ともに創る『温故創しん』会津若松」の創造がなされるものと考えております。
こうした考えのもとに、自分たちの住み暮らす地域を、より良くしていく活動と共感づくりに努めていくとともに、市民生活と切り離すことができない社会資本の整備や都市機能の維持・向上に全力で取り組んでいく所存であります。
何卒、市民の皆様並びに議員の皆様におかれましては、引き続き市政運営について、一層のご支援とご協力を賜りますよう、心から念願申し上げます。
お問い合わせ
- 会津若松市役所 企画調整課 企画政策グループ
- 電話:0242-39-1201
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