会津の生き物に関するコラムを掲載します

公開日 2019年03月01日

更新日 2019年03月14日

    

ヤマネの写真

ヤマネ

 

 市ではホームページに会津の生き物に関するコラムを掲載しています。(隔月を予定)

 わたしたちのまわりには、たくさんの「身近な生き物」たちがすんでいます。しかし、どのような生き物が身近にすんでいるか、またその暮らしぶりを知る機会は少ないのではないでしょうか。そのような近くて遠い存在の、「身近な生き物」を知りたいという方は、ぜひこのコラムを読むことをおすすめします。

 コラムは、生き物について詳しい「会津若松市 身近な生き物基本調査会議委員」の方々に、執筆していただいています。

 

 

目次 

 

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コラム17「哺乳類のフンを調べてみると」(平成30年11月 文:五十嵐 悟)

 会津若松市には、ネズミやコウモリなど小型のものから、カモシカツキノワグマのような大型のものまで様々な哺乳類が棲んでいます。以前のコラムでは、足跡を見て哺乳類の生息を確認する方法を書きましたが、今回は別の方法を紹介します。
 生き物が生きていくためには色々なものを食べ、そしてフンとして排出します。今回はこのフンについてのお話です。
フンを観察すると色々なことがわかります。哺乳類は、種類によってフンの形状が異なります。わかりやすい種類としては丸い形をしているウサギやムササビのフンが挙げられます。これらは植物食のため臭いもほとんどありません。ムササビやウサギはエサを食べながら色々な場所でフンをしています。

ムササビのフン.jpg ムササビのフン(大きさは約1cm)
ノウサギのフン.jpg ノウサギのフン(大きさは約5cm)

 それに対して、タヌキやカモシカは私たちと同じように決まった場所でフン(ためフン)をします。彼らはなぜそのようなフンの仕方をするのでしょうか。人間であれば、衛生的な理由になると思いますが、動物たちにとっては人間とは違った理由のようです。
 タヌキもカモシカも、どちらも決まった場所でフンをします。しかし実はタヌキは多数の個体が同じ場所でフンをし、カモシカは単独の個体が同じ場所でフンをしています。タヌキのためフンはタヌキ同士の情報交換の場になっているのではないかと言われています。タヌキのフンを良く見てみると、色々な種子が混ざっています。他のタヌキはこんなものを食べているのか、近くにはこんなエサがあるのかといったことをお互いに知る場になっているのです。

タヌキのためフン.jpg タヌキのためフン
タヌキのフンからの芽生え.jpg タヌキのためフンかたの芽生え

 タヌキのためフンのあった場所では、春にはフンに入っていた種子が発芽するのが観察できます。植物にとってもタヌキがいることで種子を遠くまで運んでもらっているようです。
 フンからは、その生き物が何を食べているのかを知ることもできます。多くの哺乳類は、季節や棲んでいる環境によって色々なものを食べています。テンのフンを実際に調べてみたところ、夏にはセミの幼虫や甲虫の成虫、ネズミの骨などが出てきましたが、秋にはアケビなどの木の実の種子が多く入っていました。
 生き物がどんなものを好んで食べているのかを知ることはとても大切なことです。なぜならば、その生き物が生きていくために必要なものを知ることができ、エサを知ることで、どの辺りを探せばその生き物に出会えるかがわかるからです。
 これからの季節、雪の上ではフンがよく目立ちますので、雪の上を歩く際はぜひ探してみてください。

 

コラム16「猪苗代湖の魚類」(平成30年9月 文:成田 宏一)

 「ギンブナ」

 1970年代、手漕ぎボートが満杯になるほどのギンブナが獲れたのは猪苗代湖。田植えが始まる頃になると、田んぼで暖められた排水が湖岸へ流れ込み岸辺の水温も
温んだところへ、卵を抱えた尺ブナは雄を従えて群れでやってくる。地引網で一網打尽にできるのはこの時期だけである。
 前浜は、湖の北に広がる猪苗代湖最大の藻場でギンブナの産卵場になっている。水深1㍍程のヨシ等の水草が茂るこの水域に踏み込むと、腰のあたりまで埋まる。フ
ナの卵は、枯れた水草にびっしりくっついている。透明な受精卵は5日程でふ化する。稚魚はワムシやミジンコ等を餌に成長し、湖水浴の賑わいが静かになる初秋には近くの志田浜へ向かう。湖岸や沖の深みで二冬ほどを過ごしたギンブナが、大きな群れをつくり繁殖行動の準備をするところを漁師は待ち構えている。
 大鍋に尺ブナを数尾ならべて味噌で煮る。骨が軟らかくなるほど煮込んだフナの味噌煮はまことに美味。

 「ウグイ」

 猪苗代湖に生息するウグイの親魚は、桧原湖や阿賀川に棲むものに比べて小さい。エネルギーの代謝を少なくし、成熟年齢を早めて世代交代をしていると考えられる。長瀬川から酸性水が流入する猪苗代湖は、魚類をはじめ生物にとって棲みにくい。ゾウミジンコは、琵琶湖産に比べて大きさは3分の1である。
 ウグイの卵は、酸性水にさらされると生き延びることはできないので、産卵する場所は舟津川や町ケ小屋川そして湖岸の一部に限られる。ふ化したウグイの仔魚が酸性水に耐えられるのは、長い年月を継代して獲得した習性であろう。100平方キロメートルの広大な湖内をゾウミジンコ等を餌に、2年後には次の世代を残せるまで成長する。

 1970年代、長瀬川の河口で、刺し網にかかったウグイの皮膚が、火傷したようにただれていたのを観察した。酸川(すかわ:安達太良山系から流下して長瀬川に合流する強酸性水の河川)の酸性水をもろに被ったのである。
 ハヤ又はアカハラとも呼ばれる婚姻色をまとった湖産のウグイは、串に刺して焼き甘辛いたれで食す。またテンプラも良い。骨は軟らかいので、頭から丸かじりできる。

 「エゾイワナ」

 市内湊町原の集落付近を流れ、崎川浜で猪苗代湖へ注ぐ原川。アメマスと呼ばれてきたイワナの仲間エゾイワナが棲む。2013年夏、すくい網でイワナの稚魚が獲れた。
 1960年代には、原川や舟津川、高橋川等でイワナの親魚を採捕して採卵、ふ化放流を継続していた。その子孫が継代しているのであろう。当時の親魚は1m近くのものもあり、1河川で10数尾捕獲していた。
 数年前の秋、菅川上流の浅瀬で全長30―40㎝程のつがいを観察することができた。

 

コラム15「アオガエル再考」(平成30年5月 文:菅原 宏理)

 「アオガエル」


 今年は4月11日にシュレーゲルアオガエルの初鳴きを聞きました。ソメイヨシノの開花とともにシュレーゲルアオガエルの活動開始も早まったようです。

 これから彼らにとって、最も大切な、最も忙しい季節がやってきます。以前にも掲載しましたが(コラム2)、田んぼの代掻きが始まる頃が鳴き声のピークで、しばらくすると後発のアマガエルの「グエッグエッ」にかき消される甲高い「ココココ」というきれいな声です。平場の田んぼではほとんど聞かれませんが、神社などの小さな林の側にある田んぼなどで良く聞かれます。

シュレーゲルアオガエルの写真.jpg シュレーゲルアオガエル(福島市2009.6.28)

 モリアオガエルと近縁でもあるためか、生息場所は人間の生活に適応しているアマガエルと比べはるかに限定的です。モリアオガエルはシュレーゲルアオガエルよりも遅れて繁殖期を迎えます。会津若松では6月半ばから7月上旬でしょうか。これも以前のコラムに掲載しましたが(コラム2)、山地に多く生息し、湖沼の水面に突き出た木の枝などに泡状の卵塊をつくり、その中に産卵します。シーズンになるとその山一帯のモリアオガエルが沼湖に集中する場所もあり、うっそうとした森の緑に白い花が咲いたようで美しい光景です。

モリアオガエルの卵塊.jpg モリアオガエル卵塊(会津若松市2009.7.2)
モリアオガエルの写真.jpg モリアオガエル(会津若松市2009.7.2)下の大きいのが雌、上が雄

 福島県では川内村の平伏沼(へぶすぬま)がモリアオガエルの繁殖地として国指定の天然記念物となっています。また、市町村単位で天然記念物に指定されている地域も多数あります。山地棲であり、普段目にする機会が少ないことと、平伏沼をはじめとする「天然記念物」に指定されていることなどから、希少でめったに見られないカエルのイメージがありますが、意外に多くが生息しているようです。特に自然に恵まれた会津地方には、そこかしこに平伏沼にも劣らない規模のモリアオガエルの産卵場があります。モリアオガエルの生息は豊かな自然の指標とも言えるでしょう。
 そんなモリアオガエルですが、周辺の県(山形・栃木・群馬・新潟)をはじめ、少なくない県で絶滅のおそれのある生物(準絶滅危惧種)とされています。両生類は産卵および幼生期の生活を水中で行うため、水辺の環境の変化は両生類にとって大きなダメージとなります。異常気象や人為的な環境変更で産卵に適した水場が失われれば、その一帯の両生類が一斉に姿を消すこともあり得ます。
 生物は「食べる」「食べられる」の関係で複雑につながっていて、「食べられる」側の生物は「食べる」側よりはるかにたくさんの数(量)がなければ食物連鎖のピラミッドは成り立ちません。カエルをはじめとする両生類は、多くの動物たちの餌としての役割があり、両生類の安定した生息は生態系全体のバランスを保つのに不可欠です。
 一昨年の冬(平成27~28年)は記録的に少ない積雪で、生活にはとてもありがたかったのですが、尾瀬ではその後の春に雪解け水の量が少なく、毎年クロサンショウウオが産卵場としている場所の水が、幼生のふ化前に干上がってしまう事態となりました。尾瀬に限らずおそらく至る所で同様の出来事が起こっていたと思われます。厄介な積雪も、豊かな自然を保持するために必要なのだと改めて感じ、今年の例年通りの冬も、仕方ないのかなと考えられるようになりました。

クロサンショウウオの卵塊.JPG クロサンショウウオ卵塊(尾瀬2016.5.28) 水不足で干上がった卵塊
クロサンショウウオの卵塊2枚目.JPG クロサンショウウオ卵塊(尾瀬2017.6.24) 例年の卵塊の様子

 最終的な生活の場を陸上に決めたものの、完全に水場と決別できなかった両生類は、水から離れることができた他の陸上生物と比べ、生息環境への依存度がはるかに高いといえます。そんな水場を守りながら、いつまでもカエルたちを身近に当たり前に見ることができる会津であり続けてほしいと願っています。

 

コラム14「ドジョウとギンブナ」(平成30年3月 文:成田 宏一)

「ドジョウ」 

 

ドジョウ図1.ドジョウ

 会津若松市内でみられるドジョウの仲間は、ドジョウ、シマドジョウ、フクドジョウ、そしてホトケドジョウの4種類です。

 ドジョウは、田んぼの水路や街中の側溝を覗くと泥を巻き上げて潜り込んで隠れます。すくい上げて口の周りのひげ10本を数えるのはたいへんです。スーパーで売り出されるのは秋も遅くなってからです。狭い桶に重なり合ってからだをくねらせ、時々水面に浮いてきて空気を吸い込む様子が見られます。水中の酸素が足りないと、空気中の酸素を取り込んで腸で呼吸するすぐれものです。全長20cm、30gのドジョウは最大型と思われます。

 シマドジョウはきれいな水を好み、体側には暗褐色の斑点があり、目の下には刺があります。阿賀川(大川)で獲れる数は、次に述べるフクドジョウに追い越されました。刺し網でたくさん獲ったのは、羽鳥湖(天栄村の人口湖)でした。ゆるやかな礫底の広がる湖岸に網を仕掛けると網目に見えないほどのシマドジョウが獲れました。一匹ずつ網から外すたびに、刺が手のひらに刺さり、痛い目にあった記憶がよみがえります。

 フクドジョウの自然分布は北海道だけでした。1990年代以降、会津の河川で見られるようになりました。2017年、大川で採捕したドジョウの仲間ではフクドジョウの数が最も多く、次いでシマドジョウ、ドジョウの順でした。県内では、阿武隈川水系や久慈川でも生息が確かめられています。大川に分布する本種のDNAは、北海道の留萌川や小平しべ川に生息するドジョウと同じであることが明らかにされています。

 生息環境は夏の水温があまり高くなく、砂礫の瀬があり餌の底生生物があれば定着条件は十分にあるとされているので、大川ではこれからも数を増やしていくと思われます。平瀬を主な棲み場にするオイカワやアブラハヤなどの在来種と餌をめぐっての競争などの推移を見守っていくことが肝要です。

 ホトケドジョウは冷たい水と砂底をえらんで棲みつきます。かつて、湊町や門田地区の水田水路にはたくさんのホトケドジョウがみられました。しかし、水路が三面コンクリートに改造されて以降、その姿は消えてしまいました。今では、残された僅かな水路で命をつないでいます。口髭を6本もち、ブクラッチョと呼び親しまれてきた姿が再びみられるようになるのは、相当の年月がかかると思われます。

 

「ギンブナ」

 

 湯川や古川、せせなぎ川そして猪苗代湖、ダム湖(東山、若郷湖)のギンブナは自然繁殖の種と放流される種が混在しています。マブナと呼ばれるギンブナは、漁業権魚種として地元の漁業協同組合では毎年放流しています。

 古川ではミミズの餌に寄ってきます。猪苗代湖では北岸に主産卵場があり、その周辺が主な漁場です。湖西の湾入部にも分布します。

 1950年代のスダテ網や地引網が盛んであった頃には、手漕ぎボートが満杯になるほど獲れました。湖岸の枯れたヨシ原に、フナの産卵群が大量に寄ってくるところに地引網をしかけると大漁です。当時、猪苗代湖の北岸地方の’さなぶり’(※1)にはフナの味噌煮を振る舞っていました。5月の中頃、尺ブナを大鍋に並べて骨から軟らかくなるまで煮る。大きな卵を抱えた一匹をたいらげるのには、相当の覚悟が要りました。

 猪苗代湖産ギンブナの雌雄比は、全長10cmでは2:1、25cm以上になると全て雌でした。1990年代、若郷湖(大川ダム湖)で見かけたギンブナは猪苗代湖湖畔で食したギンブナくらい大きく丸々と太っていました。

 

※1 田植えを終えた後の祝いまたは休日のこと。

ギンブナ 図2.ギンブナ

コラム13「花のつくりを楽しもう」new!!(平成30年2月 文:五十嵐 義)

 春、山野を歩く。どこに行っても花は見られる。淡紅色の花ハルジョオン、青色の花オオイヌノフグリ、白色の花ハコベなどが目につく。スズメノカタビラ、スズメノテッポウなど目立たない花でも、その植物に合った造りとなっている。花とは、どんな構造をしているのだろうか。

 花とは、(1)がく片、(2)花びら(花弁)、(3)雄しべ、(4)雌しべの4つから成り立っている。

 

花の構造 図1.花の構造

 もっと細かに見ると(図1)

(1)がく片は、全部合わせて「がく」といい、

(2)花びら(花弁)は全部合わせて「花冠(かかん)」、

(3)雄しべは、花粉を出す部分を「葯(やく)」、柄の部分を「花糸(かし)」と呼ぶ。

(4)雌しべは、種子になる部分を「胚珠(はいしゅ)」、胚珠を包む部分を「子房(しぼう)」、花粉を受ける先端部分を「柱頭(ちゅうとう)」、子房から先端までを「花柱(かちゅう)」と呼ばれる。

 これが1つの花である。

 
 
ヒメジョオンとハルジオンの舌状花 図2.ヒメジョオンとハルジオンの舌状花

 ヒメジョオン、タンポポ、シロツメクサの頭花を2~3本取って、子どもたちに「今、持っている花の数はいくつかな」と聞いてみると、何と答えるだろうか。たぶん、2本の場合は2つ、3本の場合は3つと答えるでしょう。1本、1本が1つの花として見ているのです。

 そこで、ヒメジョオンを軸からバラバラにして1つだけ見せると、花の形が理解できるようです。花弁1枚の舌状花花弁の先が5つに分かれている筒状花があることがはっきりするのです。(図2)

 シロツメクサでは、花軸の頂端に多数の花が円形について1つの花のように見えるが、よく見ると花の形がはっきりしているので、子どもでも花の集まりと気づくでしょう。

 シロツメクサは、マメ科の植物で花弁は5枚、下2枚を龍骨弁、両側の花弁2枚は翼片上の1枚が旗弁と呼ばれる花形をしている。

 

 山里のやぶかげでは、オドリコソウ(シソ科)が見られる。どんな形の花だろうか。花びらは長さ3~4cm、下半部は筒、上半部は深裂して上唇と下唇に分かれ、下唇は3裂、その中央裂片は大きく、先は浅く2裂する。説明は複雑な形に見えるが、「踊り子」の形であるという。同じ科にカキドウシ、ホトケノザ、イヌゴマなどがある。(図3)

 花の中には、エンレイソウ、サクラタデのように花弁がなく、がく片が花弁のようになっている花もある。(図4)

ヒメオドリコソウの花 図3.ヒメオドリコソウの花
がくが花弁となった花 図4.がくが花弁となった花

 また、がくも花弁もない花では、ドクダミやヒトリシズカのような花もある。(図5) これらは花そのものが小さく、ルーペを使用しないとよく見ることができない。ドクダミは花の集まりの花序の下に4枚の白い花弁のようなものがあるが、これは花の集まりを包んでいた総包である。

 単子葉植物の中には、がくが花弁と同じような形になって区別のつかないものがある。(図6) これを花被といい、がくに当たる外側の3枚を外花被、花弁に当たる3枚を内花被と呼んでいる。アヤメ、コオニユリ、ヒメシャガ、キバナノアマナなどがある。

 同じ科の植物では、種類を見分けるのに、花のがくの形、花弁の模様、花柱の長さや形、柱頭の形、毛の有無などの違うものがあり、それが判断の基準になることがある。(図7)

メシベ・オシベだけの花 図5.メシベ・オシベだけの花
がくと花弁の区別のない花 図6.がく花弁の区別のない花
 
メシベやがくに違いのある花 図7.メシベやがくに違いのある植物

 虫媒花、風媒花といわれる花もあるが、受精するのに花粉が虫に運ばれる花と風に運ばれる花の違いである。虫に運ばれるとすれば、どのようにして花粉が運ばれるのか。その花の仕組みを見つけるのも楽しみである。花によって異なるはずである。風媒花、風で運ばれるのに花はどうなればよいのか。受け取るのにはどうか。観察は難しいかもしれないが、なんとなく楽しくなる。ルーペを持って野外で観察してみよう。

 とにかく、身近な場所で花の造りを調べてみることは楽しいことではないか。形の面白さ、なぜ、そんな形なのか不思議さを考えてみることも素晴らしいことである。 

 

 

コラム12「空飛ぶリス、ムササビとモモンガ」(平成30年2月 文:渡邊 憲子)

 「会津若松市 身近な生き物」の中に選定されているリスの仲間、ムササビとホンドモモンガ。みなさんは実際に彼らがここで暮らしているんだなあ、と実感したことはありますか?
 森林に棲み、夜行性である彼らはなかなか身近には感じられないかもしれません。モモンガは原生林のような豊かな森に暮らしていることが多いので探すのはちょっと難しいですが、里山にも暮らすムササビは観察のコツをつかめば姿を見ることもできるかもしれません。今回はその観察のコツをお伝えしようと思います。
 ムササビとモモンガ。彼らは前足と後ろ足の間にある被膜と呼ばれる膜を広げて木から木へ、ハングライダーのように滑空します。リスは明るい時間帯に活動しますが、彼らは夜行性。被膜を広げた大きさを、ムササビは座布団、モモンガはハンカチにたとえられます。ムササビが滑空する姿を何度か見たことがあります。夜空に一瞬ふわっと浮いてスーッと滑空する黒いシルエットを見たときには、嬉しくてドキドキしたものです。
 さて、哺乳類を探す手掛かりは生活痕跡を見つけることです。生活痕跡とは、足跡や巣穴、エサを食べた痕跡など、その動物が生活することで残す痕跡のこと。これを見つけて探偵のように推理していくわけです。冬のこの時期、動物を探すのに一番わかりやすいのは雪の上を歩いた足跡です。きれいに残された足跡はその動物を推察するのにとても有力な手掛かりになります。しかし地上に下りない彼らの足跡を見ることはまずありません。残す痕跡で確実なのは糞を見つけることです。ムササビはちょうど正露丸のようなころころと丸い糞、モモンガは同じぐらいの大きさで俵型の糞です。正露丸みたいに小さな糞、どうやって見つけるの?!と思うかもしれません。
 ここからが見つけるコツです。冬眠をしない彼らは冬でも活動しています。まずは食べ物のある場所を狙ってみましょう。少々堅雪になった季節、山が後ろに続いていて、ちょっと大きな杉の木がある、お寺や神社は狙い目です。ムササビやモモンガの食べ物は木の葉や芽、木の実などです。広葉樹が葉を落としている冬の時期は常緑樹であるスギの葉や実をよく食べています。スギの木の下で雪の上を丹念に探すと、ムササビの糞が見つかる可能性は大です。糞だけでなく、ちぎられたスギの葉やかじられたスギの実なども見つけられるかもしれません。冬の時期は、雪があることでその上に落ちた小さな糞や食痕が見つけやすいのです。
そして大きな杉の幹に木のうろがないか探してみましょう。うろを見つけたら周辺の木の皮が毛羽立っていたり、穴の縁が新しく削られているような痕跡がないか観察します。そんな痕跡があれば、ねぐらとして使っているかもしれません。ムササビやモモンガは樹洞をねぐらとして使っています。大きな木には巣穴として使える樹洞ができやすいのです。
 山のふもとにある神社やお寺は大きな木があることも多く、樹洞を見つけるにもうってつけの環境なのです。
もし、実際に姿を見たい場合は、狙った樹洞を見渡せる場所で日が暮れるまで静かに待ちます。運よくその樹洞にムササビが休んでいたならば、すっかり暗くなるころにそっと顔を出します。「グルルー、グルルー」と鳴いてくれるかもしれません。辺りはすっかり暗いので、明かりがほしいところです。ムササビを脅かさないように、赤いフィルムを貼った懐中電灯を使ってくださいね。
案外、近所の神社でも見つけられるかもしれませんよ。

 

ムササビの糞 ムササビの糞。形も大きさも正露丸のよう。
モモンガの糞 モモンガの糞

 

コラム11「会津の刈田をめぐる野鳥」(平成29年12月 文:満田 信也)

 

  • 平成29年2月16日(木)

 

タシギの写真

タシギ

 北会津西部の雪融けが進む水張り田に多数の白鳥が飛来しており観察する。コハクチョウが200羽ほど、水田から100m離れた小高い雪の上で休んでおり、水田にはオナガガモが数羽、土が現れたところにはカワラヒワ、ムクドリの群れが餌をあさっている。ガマの穂にはモズが尾を振っている。雪が消え露出している稲株でスズメ、カワラヒワの群れを見ていたら、視野にタシギが入った。タシギまで10mもない。こちらは農道に止めた運転席からの双眼鏡で、車から降りなければ飛び立たないだろうと中で見ていると、タシギは3羽、体を低くし稲株に隠れるように微動だにしない。こちらを警戒している。たまたま、双眼鏡の視野に入って気づいたのだが肉眼だったら見逃してしまっただろう。見続けて30分、ようやくからだを起こし、長いくちばしを泥に挿し入れ始めた。それでも、車や人が通る度に身を伏せたり、動かなくなる。タシギの稲わらによく似た葉隠れの術ならぬ保護色と慎重さに感心した。

 
  • 2月15日(木)

 

コハクチョウの写真

水田に群がるコハクチョウ

 同所でコハクチョウがたくさん群れているところを観察する。コハクチョウより遠方を双眼鏡で見ていたら、雪の上にハヤブサの姿が入る。雪の上にちょこんと座っているようで、視線はこちらのハクチョウの群れに向いている。ハヤブサが飛び立ち、こちらめがけて力強く羽ばたいてやってくる。えっ、ハクチョウを捕獲?と思ったら、ハクチョウは動かず、回りにいるカラス、ツグミ、ムクドリが一斉に四散し、逃げ散った。狩りは成功せず、ハクチョウのにぎわう水田に戻った。この観察を終えて、車を動かしたら、田の一角に稲わらが動くのを見て、何だろうと双眼鏡を向けると、キジの雌が稲わらの下の虫を採っているところであった。しばらくすると身を伏せ全く動かなくなった。どうしたのだろうと、ドアを開けると同時に、私の頭上を鳥の影が通り過ぎ、キジの声が起こり、猛スピードで飛び去っていった。それを追いかけるノスリ。キジをウォッチングしていたのは私だけでなかったことを知った。雪融けの安穏な田畑風景であるが、「食う食われるの関係」が存在していた。

 

  • 3月4日(土)

 

タゲリの写真

湿田にいるタゲリ

 湯川村のまだ雪が残る湿田にタゲリの群れを見に出かける。30羽ほど田んぼに散在して餌を採っている。ミュー、ミューと猫が鳴くような声を上げ、ふわふわと飛び立ってはまた近くに舞い降りる。じくじくした田んぼを好み、泥の中のミミズなどをくちばしで引っ張り出す。1羽の様子を丹念に見ると、数歩足早に歩いては立ち止まり、姿勢を崩さず何か気配をさぐって、餌を採っては歩き出すという繰り返しである。この気配をさぐる素振りは、立ち止まって動かない直立の姿勢であるが、左右どちらかの足を小刻みに震動させている。人で言えば「貧乏揺すり」のように、泥を震動させるのである。どのタゲリも同じ貧乏揺すりをするのであった。

 
  • 11月20日(月)

 

コミミズクの写真

コミミズク

 会津美里町在住の白鳥の写真撮影をされている方から、GPS付きコハクチョウがいるとの情報をいただいた。鶴沼川の中洲に多数集まっている中に紛れていたそうだ。写真の整理中に気付いたとのこと。撮影日は12日、まだ近辺にいるに違いない。野鳥の会で捜索することにしたが、発見できなかった。調査中、会津坂下町若宮地区の農道でコハクチョウの群れを見ていたら、2羽のカラスに追われるノスリ?を見かける。やけにふわふわした飛び方をするなと双眼鏡で見ると、前部がずんぐりとしていて頭部がないように見える。えっ、コミミズク!県内でも目撃情報のないコミミズクとの出会いであった。フクロウと違い、北方から冬鳥として飛来し、昼日中でも餌を採るなど変わった種類である。コミミズクはカラスに追尾され遠方へ飛び去ってしまった。

 

 

 

 

  • 12月1日(金)

 

GPS付きコハクチョウの写真

GPS付きコハクチョウ

 会津坂下付近に放鳥されたコウノトリ(名は未来・雌)が来ているとの情報があり、GPS付きのコハクチョウの捜索も兼ねて、河東から湯川村へ。堂畑地内で200羽のコハクチョウの群れに会う。1羽ずつ見るが、かなりの個体が首を翼の間に入れ休息中、これではGPSは見られないなあと見ていたら、1羽のコハクチョウの足下に赤いものが見える。足輪ではないか。放鳥の別個体がまだいるのかと驚いて見ていると、頭が起き上がり首筋に何か黒いものが見える。GPSではないか!方角を変えて、今度はスコープで観察、GPSであり、左足に赤の輪(標識番号もあり)、右足には金属環を付けていた。帰ってから、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)に問い合わせたところロシアでの放鳥とのこと。なお、放鳥されたコウノトリは12月現在、浜松まで移動しているとのことであった。

 

 

 

 

 

 春先と初冬の刈田の野鳥観察記録を載せた。刈田に行けば何かしら野鳥の姿があり、興味深い生態を見せてくれる。野鳥にとっては国籍、市町村などなく、そこに餌があり、種族繁栄に適した土地であれば訪れる。刈田は、野鳥観察にはおすすめの環境である。

 

コラム10 「冬眠する動物 ヤマネ」 (平成29年2月 文:五十嵐 悟)

 

ツキノワグマの写真

ツキノワグマ

 前回、冬の時期に哺乳類は足跡で見つけましょうというお話を書きました。しかし、今回のお話は、冬には寝てしまう哺乳類について書きたいと思います。
 冬眠する哺乳類の中で皆さんがよくご存知なのは、ツキノワグマだと思います。ツキノワグマの冬眠は、体温はある程度高いままに維持し、飲まず食わずで冬を過ごします。

 

 しかし、今回紹介する『ヤマネ』はツキノワグマとは全く違った冬眠の仕方をします。ヤマネは、気温が12℃くらいまで下がると冬眠すると言われています。木の洞や巣箱、落ち葉の中など様々な場所で冬眠している姿が確認されています。あまり決まった冬眠場所はなく、寒くなって来たらその周辺で冬眠場所を決めてしまうようです。
 冬眠している間は気温に合わせて体温も下げていきます。ヤマネの体温は1℃くらいまで下がり、同時に呼吸数や心拍数も下がり、代謝が落ちます。冬眠中は秋にたくさん食べて蓄えた体内の脂肪を消費し、一切食べ物をとりません。そうして約6~7か月間の冬眠を行います。ちなみに、外気温が-7℃くらいになると、生命の危険を感じて起きだし、ねぐらを変えるそうです。 

 
ヤマネの写真

ヤマネ

 ヤマネは1975年に国の天然記念物に指定されました。2007年までは、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧に指定されていましたが、本州・九州・四国とほぼ連続的に分布していることがわかり、2012年に発表されたレッドリストの見直しではランク外として削除されてしまいました。レッドデータブックふくしまには、現在希少となっていますが、今後どのようになるのか気になるところです。

 

 会津若松市にもヤマネの生息は確認されています。背あぶり山や東山、大戸岳周辺など大きな森が残り、ちょっと標高の高いところに生息しているようです。
 なかなかお目にかかれる機会は少ないのですが、貴重な自然が残る地域にはヤマネをはじめとした貴重な生き物達も生息しています。これからもヤマネが生きて行けるような自然を残していきましょう。

 

コラム9 「身近な生き物」になりつつある野生動物たち (平成29年1月 文:渡邊 憲子)

 これから紹介する動物は「会津若松市身近な生き物大図鑑」では紹介されていない動物です。今から約10年ほど前に最初の会津若松市の身近な生き物調査が行われたと記憶しています。そのころには記録されなかった動物。それはイノシシとニホンジカです。

 

ニホンジカの写真

ニホンジカ(雄)(撮影場所:神奈川県)(画像著作権者:渡邊 憲子氏)

 

 これらの動物はこれまでは会津地方にはいないといわれてきました。蹄を持つ細い脚では雪の積もる土地での生息は難しいとされてきたのです。実際に東北地方では雪の少ない沿岸部など一部を除いて、一昔前まではほとんど分布はなかったのです。
 ところが最近、会津周辺でも生息している情報が増えてきました。イノシシは猪苗代町や会津美里町などでは数年前から被害が発生していますし、ニホンジカは尾瀬の高山植物を食べる、湿原を荒らすなど、新聞やニュースなどでご存知かと思います。南会津では今や狩猟で普通に獲れる獲物となっています。近年は会津若松市でも山間部でのイノシシの被害やニホンジカの目撃を聞くようになってきました。

 
 

 なぜ、いままでいなかったこの動物たちがここ数年でみられるようになったのでしょうか。気候の変化で暖冬が多くなり、冬の積雪量が少なくなったから生息できるようになったと考える方が多いでしょうか。

 実は、江戸時代ごろの文献を調べてみると東北地方にもシカやイノシシが生息していたことがわかる記述がいくつもあることが徐々に分かってきました。青森では寛永の時代にイノシシによる農作物被害で飢饉がおこり、多くの人が餓死した記録もあるそうです。厳しい冬が訪れる青森でもイノシシは生息できるのです。

 

イノシシが土を掘り起こした写真

イノシシが土を掘り起こした跡

(画像著作権者:渡邊憲子氏)

 では逆になぜ、今までシカやイノシシの姿を見ることがなかったのか。
 江戸時代まで庶民は銃など武器となるようなものはその所持が厳しく制限されていました。ところが明治になると庶民でも銃を手に入れることができるようになりました。明治以降は西洋文明の影響もあり狩猟が盛んにおこなわれた時代といわれています。雪の積もる地方では動物の足跡が残るので追跡をして獲物をしとめやすいため、野生動物の乱獲につながりました。もともと人の住む里山に近い環境で暮らしていたシカやイノシシは獲られやすく、東北では絶滅に近い状態となったようです。
 クマは胆嚢(熊の胆)が珍重されて捕獲対象とされていました。カモシカも毛皮や肉として獲られて数を減らしました。一時は幻の動物といわれ、天然記念物となったのもこうした背景からです。サルも薬用や厩の守り神信仰として需要があり、狩猟の対象とされていました。それでも森林性で山岳地帯にも適応していたクマやカモシカ、サルは険しい山奥にいることで絶滅は免れました。

 

 

 

 
イノシシの足あとの写真

イノシシの足あと

(画像著作権者:渡邊憲子氏)

  農家のお年寄りとお話しすると、昔はこんなに動物はいなかった、畑を荒らされることはなかったと言います。でもそれは、動物が狩猟で数を減らしたここ100年ぐらいのこと。長い歴史の中では動物のいない、稀な時代だったのです。
 今は狩猟する人もどんどん減っています。
 もともとシカやイノシシが暮らしていた里山も人間の管理から放棄され、山林に戻りつつあります。シカやイノシシの住処が彼らに戻ってきたのです。先祖の棲んでいた古い故郷に帰ってきたと考えることもできます。

 昔は身近に生息していた野生動物。
 それが再び、身近にみられる動物となりつつあります。


 自然豊かな日本は昔からいろいろな生き物と隣り合わせ、うまく共存してきました。世界的に見ても、狭い国土に多様な生き物が生息し、大都市と隣り合わせに大型哺乳類が生息することができる豊かな自然を持つ珍しい国です。
 しかし隣り合わせとは、農業被害など獣害問題が発生する場合もあります。実際、農家の方にとっては大変深刻な状況であることもあります。これは、人々が農耕を始めた時から始まった問題ともいえます。また、ニホンジカに関しては自然の植生に影響を与えることも日本各地でおこっています。
 野生動物が身近に迫っている今、どこかで起こっている出来事と思うのではなく、自然と共に暮らすよりよい方法を皆で考えていくきっかけとなれば幸いです。

 

 

コラム8 「ヘビの話」 (平成28年8月 文:菅原宏理)

 

アオダイショウの成体の写真

アオダイショウの成体(画像著作権者:菅原宏理氏)

 両生類や爬虫類を苦手な人が多くいます。その中でいちばんの嫌われ者は間違いなくヘビでしょう。動物は大好きだけれどもヘビだけは勘弁してほしいといった話もよく聞きます。犬や猫が苦手な人は、昔に吠えられたり噛まれたり引っかかれたりしたなどの苦い経験が理由であることが多いのですが、一方でヘビが嫌いな人にたずねると「気持ち悪い」「生理的に」といった曖昧な理由が返ってきます。それはそうでしょう、そもそも一般の生活の中ではヘビと出会ったり接触したりする機会はあまりなく、だからヘビに「実害」を受けた経験を持つ人はほとんどいません。嫌いであることを否定するつもりは全くありませんが、目についただけで理由なく捕まえられて殺されてしまうヘビを憐れむ気持ちは強くあります。そもそもヘビは人に対してどんな危害を加えているのでしょうか?日本では、沖縄周辺諸島のハブの被害は別とすれば、本島でのヘビによる被害はほとんどありません。農作物を食い荒らすなど間接的な被害もありません。むしろヘビは作物や食料に被害を与えるネズミなどを捕食する、人々にとって「有益」な動物です。

 
アオダイショウの幼体の写真

アオダイショウの幼体(画像著作権者:菅原宏理氏)

 昔、自分の家では夜な夜なネズミが天井裏を走りまわり、いたるところに穴をあけたり排泄物によって家屋が痛んだり、食料を食べられるなどの被害がありました。あるとき、近所で捕まえたアオダイショウを しばらく飼育していたのですが、その間ぱったりとネズミの足音が止んだという経験があります。放し飼いにしていたわけではありませんが、ネズミが通る狭い場所にも侵入して捕食するヘビは、ネズミにとって「実害」のある本当の恐怖の対象であったのでしょう。昔の農家では屋根裏にアオダイショウが住み着くことを歓迎していたという話も聞きます。また、自分が子どもの頃に大人たちから聞いたヘビの恐怖は「マムシ」という本土唯一の毒ヘビ(最近はヤマカガシも毒ヘビとされますが、人に危害を与える可能性は低いです)に対するものでした。マムシがいる場所を教えられ、近づかないように諭されましたが、マムシを見る機会は一度もありませんでした。大学ではキャンパスの至る所に「マムシ注意」の看板があり、ある日玄関先でマムシを捕獲したとの話を聞いて見せてもらいましたが、アオダイショウの幼蛇でした。アオダイショウやシマヘビは 小さいうちはマムシ柄の模様を持ち、擬態することで天敵からの捕食を免れようとします。結局、大学生活の間にもマムシを目撃する機会はありませんでした。マムシは熱感知センサーを持ち、主に恒温動物である哺乳類を食べるため、それらの餌が十分にある自然度の高い場所に生息しており、また体長が短く、高さのある行動ができないため開拓された人家近くでは生息することが困難です。以上のようなことから、人の生活圏でのマムシの目撃情報の多くは、このアオダイ ショウやシマヘビの幼蛇ではなかったかと考えます。

 

マムシの写真

マムシ(画像著作権者:菅原宏理氏)

 ヘビを恐れる心理は、人間がサルだったころにDNAに刻まれた生得的な恐怖であるという話もあります。それでも「実害」のないヘビに対して、地球上の生物の中で唯一「理性」を持たされた人間がその生を奪うことは無為な殺生であると言えます。自然はわたしたちの想像もおよばない複雑なつながりをもって成り立っています。生きとし生けるものすべては何らかの役割をもって地球上で生活し、いなくても良い生物などありません。地球温暖化や異常気象など大きな自然の異変が叫ばれて久しい現在ですが、わたしたち一人一人が真に大切にしなければならないことは、身近にあるひとつひとつの生命に対する慈しみの心と、忘れかけた自然への畏敬ではないかと思っています。

 

  

コラム7 「今年見たスミレと花の咲く期間」 (平成28年5月 文:五十嵐 義)

 「山路(やまじ)来て何やらゆかし菫草(すみれぐさ)」、これは芭蕉の句である。スミレは、里山のやや明るいところに生えているが、山道を歩きながらこんな気持ちになれたら素晴らしいことである。

 ところで、今年、市内の里山で見られたスミレをあげてみよう。

 はじめに目についたのは、古くから日本人に親しまれて来たといわれるタチツボスミレである。その特徴は、托葉に櫛(くし)の歯状の深い切れ込みがあり、花茎は茎の葉のつけ根から出るものと株の根もとから出るものがあることである。このなかまで白色の花のものがあるが、これはシロバナタチツボスミレである。タチツボスミレと似たものにオオタチツボスミレがあるが、花柄は株の根もとから出さず、茎の葉のつけ根から出ていること、花のうしろの距(きょ)が白いことで区別される。

 花期の早いスミレのひとつにアオイスミレがある。葉の形がフタバアオイに似ていることから名付けられた。植物体全体がビロード状の毛でおおわれていて、果実が株の根もとについていること、花のあと、匍匐茎(ほふくけい)をのばして先端に新しい株をつくる特徴がある。

 白い小さい花のニョイスミレ(別名ツボスミレ)は、陽向の地から沢沿いの林の少し湿り気のあるところに見られ、多くは群生している。花期は、スミレ全体の中で遅咲きのひとつである。

 花期に、葉のほとんどが開かないか、葉の基部がよく開いていないスミレがある。ひとつはアケボノスミレである。乾きぎみの明るい雑木林の中で、鮮やかな紅紫色の花を咲かせる。太平洋側の山地(主に東日本)に分布しているという。もうひとつは、スミレサイシンで、湿り気のある雑木林で見られ、日本海側に分布する淡紫色のスミレで、会津若松市の里山では両種が見られる。

スミレサイシンの写真です。

スミレサイシン(画像著作権者:五十嵐義氏)

 

 桜の開花する頃、谷筋の落葉樹林下など湿度の高い半日陰に生えるスミレにヒカゲスミレがある。葉や花柄には毛が多く、葉は長卵~長三角形で先がとがり基部は心形で、太平洋側の山地に多く分布している。

 タチツボスミレと同じ頃に咲くスミレに、ナガハシスミレがある。このスミレには、花のうしろにつき出た長い距があり、天狗の鼻のように見えることから、テングスミレとも呼ばれて、距が区別のひとつとなっている。

 スミレは、なかま全体の総称としても使われているが、種名として名付けられたスミレもある。このスミレは、耕作地の周辺や背炙山関白平のような高原で日当たりのよい場所に生え、葉がへら形で葉柄にはっきりした翼があり、花は濃紫色、根は褐色という特徴がある。形や花の色から考えると、もっとも親しまれているスミレであろう。

 これらのスミレ、今年は花期が終わりに近づいているので、これからの観察には、他の種類で調べて見てはどうだろうか。

 また、スミレの花は、開花すると散るまで何日か咲いている。 

 ところが、朝、開花して夕方には閉じ、次の日また開閉を繰り返す花がある。頭状花のセイヨウタンポポ、エゾタンポポなどである。同じなかまのハルジオンは、昼に舌状花が外側にそるように開かれ、夕方には内側に向かってしぼむような形になる。完全ではないがタンポポと同じような咲き方の花のように思われる。園芸種のチューリップの花も、朝夕開閉を繰り返して、花びらの大きさも散る頃には最初より大きくなっている。

 これに対して、朝に開花して夕方にしぼむか、または、花びらが散る花もある。一日しか咲いていない花である。ツエクサは、苞に包まれていた花が一個ずつ現れて咲き、一日で終わっているという。また、オオイヌノフグリの花も1日しかもたず、毎日、次から次と新しい花を咲かせているので、ひとつの花が長い期間咲いているように見えるという。この他、オオタカネバラやカタバミ、ニガナ、ジシバリ、ノゲシ、オニタビラコなどもひとつの花の咲いている期間は短い。

 自然は、注意してみると本当におもしろいし、また、不思議なこともいっぱいある。よく観察するとともに、その時だけでなく、成長を通して見るようにしたいと思う。

 ジシバリの写真です。

ジシバリ(別名 イワニガナ)(画像著作権者:五十嵐義氏)

 

 

コラム6 「季節の魚類」 (平成28年3月 文:成田宏一)

 

 会津盆地を流れる阿賀川(大川)は、湯川、宮川、日本橋、只見川などの支流を集め、新潟県では阿賀川に名前を変えて日本海へ注ぐ。そこにはスナヤツメをはじめコイウグイ、フナ類、ナマズ、アユイトヨドジョウなど32種の魚類(※1)が生息しており、そのうち15種はコイ科の魚類です。
 (※1):平成27年度、国土交通省 北陸地方整備局 阿賀川河川事務所が実施した河川水辺の国勢調査結果による

 

ウグイ

 県内にはウグイ、ウケクチウグイ、エゾウグイ、マルタウグイの4種類が分布する。ウグイは会津、中通り、浜通りの全域、ウケクチとエゾは会津、マルタは浜通りのそれぞれの地域でみられる。

 ウグイはハヤ、アカハラとも呼ばれて子供から大人にまで親しまれている。大川の産卵場は、流れが深みへ落ち込み、小石が転がり落ちる程のところ。そこは春真っ盛りの頃、ウグイを一網打尽にできる唯一の場所。漁協のベテラン組合員は、朝から晩まで投網を打ちクーラーボックスを一杯にして、夕日に輝く磐梯山を背に帰り道を急ぐ。

 

ウグイのイラストです。

ウグイ産卵親魚 (画像著作権者:成田宏一氏)

 

ウグイと酸性水

 猪苗代湖は酸性湖(※2)でした。

 猪苗代湖に流入する最大河川長瀬川の支流酸川・すかわ(pH3)は強い酸性水を湖に運ぶ。酸川の酸に魚類の姿はないが、特殊な藻類や底生生物は生息する。酸川は、長瀬川本流の発電放流水で希釈されて湖内に分散するので、長い年月を掛けて耐性を獲得したウグイやギンブナ、そしてエゾイワナなどの生存を可能にしている。

 酸川の水ではウグイ卵のふ化率は極端に低い。1970年代のある日、長瀬川の河口で網にかかったウグイの皮膚がただれてボロボロになっているのを目撃した。酸川の強い酸性水に直撃されたのです。

 

(※2):湖沼学では、水素イオン濃度(pH)7を境に湖を類型化して、猪苗代湖はpH5.8(1970年代)の酸性湖に分類されていましたが、現在はpHが上昇し(6.8)、ほぼ中性の湖となっています。

 

マルタウグイ

 1920年代(大正~昭和初期)の猪苗代湖の魚類に関する記録に「マルタ」の記載があり、長浜沖に仕掛けた網でマルタを獲ったとある。まぼろしのウグイを探して、1970年代後半、湖内全域に数多くの刺し網を仕掛けたが、大型のウグイの姿はなかった。

 1997年7月、オホーツク海でマルタを釣る。リールに2本の針でゴカイを餌に、砂浜からコンブの生い茂る沖へ遠投。錘が沈むやいなや、ゴン、ゴンと当たりがくる。これの繰り返しで、ボックスは30cm大のマルタでたちまち満杯になる。持ち帰って得意げに蓋を開けると、たちまち言い放たれた「そんなもんかゴメ(カモメ)にくれてこい」と。仕方なく重いクーラーを担いで波打ち際で中身を空けると、遠くにいた数十羽のカモメがすかさず飛んできて、振り返る間もなくすべてをのみこんでしまった。オホーツク海の豊かさを実感する。

 

再びウグイそしてアブラハヤ

 2009年10月、只見川の宮下ダム湖で魚群(なむら)に遭遇した。10cm程の大きさで、100尾はくだらない数でまとまり円盤状の群れになって夕闇の迫る湖面を浮き、沈みを繰り返しながら湖岸沿いを上流へ向かう。偶然の出逢いに驚き見つめる間もなく、鳥の影が湖面を横切ると瞬く間に水面下に消え、二つのなむらは再び姿を見せることはなかった。魚群は、宮下ダム湖の生息魚であるコイ科の魚類(ウグイ又はアブラハヤ)であろうと思われる。

 

コイ

 中央アジア原産と言われ、その骨の一部は縄文時代の海図からも発見される。コイは貴重な食料であり、タンパク源であったことが伺われる。

 二対の口ヒゲで、川底のタニシや巻貝を探り当て、特殊な器官でかすかな音も聞き分け、硬く厚い鱗で体躯を覆う。池で飼うコイは半世紀以上も生きながらえる。自然界でも長生きできるのは、餌を探しあてる能力に優れ、素早い動きで危険からも逃れることが出来るからであろう。

 市内でコイを観察できるのは、お濠と御薬園です。お濠にはコイをはじめアブラハヤ、オイカワそしてソウギョが群れる。姿は見せないがカムルチー(ライギョ)も棲む。御薬園で、足音を聞きつけて岸辺に集まるコイの群れには齢50年以上の固体もいる。

 湊町原集落の東を北へ流れ、戸の口で猪苗代湖へ注ぐ赤井川の河口には、ヨシが繁茂する浅瀬があり、そこはコイの産卵場。大きな体をくねらせて、バシャバシャとヨシの枯れた茎に卵を産みつける様を見て感動したのは、20年も前のことです。

 1970年代には、会津でも水田でコイを飼っていた。春、ふ化して間もない種苗を田んぼに放し、秋の落水前に取り上げていけで大きく育てる稲田養鯉が連綿と続いていた。

 福島県の養殖の鯉の生産量は、平成17年には約1200トンで全国第1位でした。市内にはコイを活魚で販売する店もあります。

 コイの料理の中でもこいこく(味噌煮)は栄養価が高く、病み上がりや妊婦の方に良く利用されていた。うま煮、甘露煮など多くの調理法があり、アライも美味。

 

 

コラム5 「哺乳類の足跡を探してみよう」 (平成28年1月 文:五十嵐悟)

 2月頃会津若松市では、雪が積もり一面の銀世界となるでしょう。ちょうどこの頃に、晴れの日が続くと雪の上には、色々な哺乳類の足跡を見つけることができます。夜行性が多く、普段姿を見ることが難しい哺乳類ですが、雪の積もる今頃が足跡を探すのに最適な季節なのです。足跡からは、どのような種類の哺乳類が棲んでいるのか、どのような暮らしや行動をしているのかなど様々なことを知ることができます。
 会津若松市ではノウサギニホンリスキツネなどを含めた11種類の哺乳類を身近な生き物に指定しています。冬の間冬眠してしまうツキノワグマアブラコウモリヤマネなどは見つけることは難しいかもしれませんが、今回紹介する3種類の哺乳類の足跡は、比較的見つけやすく、特徴も覚えやすいと思います。家の周りや、ちょっと野外に出た時にこの記事を思い出して、ぜひ哺乳類の足跡を探して見てください。

 

・ノウサギ
 ノウサギの足跡はジャンプしながら前進するので、ちょうど跳び箱を跳ぶような感じで足跡がつきます。前足に比べ後ろ足が大きく、「ケン・ケン・パ」をしているようにT字に足跡がつきます。
 足跡は、山沿いや阿賀川河川敷などで見かけることができます。

 

 ノウサギの足あとの写真です。

ノウサギの足跡(画像著作権者:五十嵐悟 氏)

 

・ニホンリス
 両手両足を揃えてジャンプして進みます。ニホンリスも跳び箱を跳ぶような感じで足跡がつきます。
 足跡は、山沿いの神社など、大きな樹が残っているところでよく見かけます。子供の森や小田山周辺でも以前はたくさん見つけましたが、最近はあまり見られなくなりました。

ニホンリスの足あとの写真です。

ニホンリスの足跡(画像著作権者:五十嵐悟 氏)

 

・キツネ
 犬のような足跡ですが、犬に比べるとほっそりとしています。
 また、体が細く、後足が前足の跡に重なるため一直線に足跡がつきます。
 足跡は、山間部の耕作地など少し開けた環境で見ることが多いです。

キツネの足あとの写真です。

キツネの足跡(画像著作権者:五十嵐悟 氏) 

 

 会津若松市の大部分は会津盆地に位置しますが、大戸岳や背炙り山、猪苗代湖など豊かな自然がたくさんまだ残されています。また、ニホンカモシカやヤマネといった天然記念物に指定されている貴重な哺乳類も生息しています。無作為な開発などを避け、これからもこれらの環境を大切にして、いつまでも野生動物たちが身近で暮らせるように皆で考えて行きましょう。
 まずは、市民の皆さんが足跡などから身近なところに棲んでいる生き物たちの存在に気づいていただければ嬉しく思います。

 

 

コラム4 「季節の野鳥」 (平成27年11月 文:林克之)  

 立冬が過ぎ、日に日に冷え込みが増し、山々の紅葉の彩りが消え、木立がすっきりとしてきます。この時期は、雨が雪に変り始め冬模様となります。北風の意の「朔風葉を払う」「枯野見」と先人たちは侘しい冬景色さえも花見のように愉しみにしていたという。小春日和に近くの公園を歩き、咲いた返り花、枯れ草や落ち葉の擦れる音、柔らかな太陽の光、張り詰めた空気の匂いなど冬の風情を感じとるのも楽しいものです。

 

湖に鳥が集まっている写真です

湖がハクチョウでにぎわっている様子 (画像著作権者:林克之氏)

 

 この時期の野鳥は、湖や沼にはハクチョウ類やオナガガモ、キンクロハジロのカモ類、公園や里地にツグミやシメ、カシラダカなどの冬鳥が訪れ、スズメ、カワラヒワなどと共に白い雪に覆われる前まで、初夏のような賑わいを見せてくれます。猪苗代や坂下地方の稲刈りの終わった田んぼに、コハクチョウが白い点々に見えます。落穂やひこばえを餌としています。注意して見るとマガンタゲリなどが混じっているかもしれません。近くの公園や里地から、ヒッヒッカッカッの声が聞こえます。冬鳥のジョウビタキです。縄張り宣言の行動で、車のガラスに写った自分の姿を攻撃したりもします。オスはオレンジ色の胸と灰色の頭とおしゃれですが、メスは灰色と地味な姿をしています。しかし眼が大きく可愛いいものです。留鳥のヒヨドリはピーヨピーヨと甲高く鳴き騒がしい。北の地方から南へ移動するものも混じり、余計に賑やかに感じます。海を渡って行かないので渡りとは言いませんが、生活ぶりには謎が多くあります。50年ほど前は秋に里へ降りてくる鳥でしたが、今は年中見かける鳥となっています。

 

ヒヨドリの写真です  カンボクの実の写真です

ヒヨドリ (画像著作権者:山下剛氏)             カンボクの実 (画像著作権者:林克之氏)

 

 ヒヨドリやムクドリなどの野鳥たちのこの季節の好みは、木の実です。カンボクガマズミなどの実を食べ、未消化の種子を糞として、離れたところに散布します。実をつけた木々は、種子を効率よく散布でき、野鳥は餌を確保できるという共生という関係が出来ています。塵が積もればという視点でみると、長い年月で森が出来上がるのは、野鳥と木の実の関係があるからでしょう。野鳥が好んで食べる実も種類によって異なっているのではないか。謎が深まります。会津地方には特産の見知らず柿が多くあります。最近は、残念ながら採り残されている木を多く見かけます。しかし、動物たち特に野鳥は甘くなった熟柿が大好きで、ヒヨドリやムクドリ、冬鳥のツグミ、シロハラなどが常連です。アオゲラレンジャクなどの珍しい野鳥も集まってきます。夏よりも人を警戒しないので、良く観察できます。是非防寒対策をしっかりして、近くの公園や里地に出かけて見ませんか。自然の中で野鳥たちの元気で逞しい行動が私たちを楽しませてくれますが、同時に季節の移り変わりと美しさを感じさせてくれます。

 

  ジョウビタキのオスの写真です ジョウビタキのメスの写真です

  ジョウビタキ (左:オス、右:メス) (画像著作権者:山下剛氏)

 

 

コラム3「季節の昆虫類」 (平成27年10月 文:古川裕司)

 近頃、冬に雪が多く、夏が暑い。しかも、春や秋を感じることが少なく、冬と夏が交互にきているようだというような話を耳にします。地球温暖化の影響で、そのようなことになっているとしたら、私たちはもっと省エネを考えなければなりません。
 実際、昆虫でも以前は会津若松市内では、見かけなかった種類が見られるようになりました。ここでは、3種類の昆虫を紹介したいと思います。
 ひとつは、ツマグロヒョウモンです。♀の前翅の先端が黒いので、この名があります。♀が黒いので妻黒豹紋と書きたいですが、先が黒いという意味の褄黒豹紋です。ややこしいのは、♀の翅が黒いメスグロヒョウモンという種もいます。漢字で書くと雌黒豹紋となります。ヒョウモンとは、豹の紋様に翅が似ているからです。このように、生物の名前はカタカナ表記だけではなく、漢字で書かれるとその和名の意味がよくわかります。
 さて、このツマグロヒョウモン。鶴ヶ城では、7月と9~11月に記録があります。調べてみると、初めて鶴ヶ城で確認したのは、2008年10月でした。以前は東海地方から南西諸島が生息域で、1990年代前半までは、関東でもほとんど見なかった種だそうです。

ツマグロヒョウモンの写真です。

ツマグロヒョウモン(画像著作権者:古川裕司氏)


 もうひとつは、ヨコヅナサシガメです。漢字で書くと横綱刺亀です。成虫の白と黒の模様が、横綱の化粧回しに似ているのでついた名前のようです。成虫は黒いのですが、羽化直後は驚くほどに赤くきれいです。しかし、刺亀の名の通り、刺されると激痛とのことなので注意が必要です。
 鶴ヶ城で、2013年10月23日に初めて幼虫を確認したのですが、今は、いる場所さえ知っていれば、普通に見られるようになりました。以前は本州中部以西の分布でしたが、もともとは、中国から東南アジアに分布する外来種で、昭和初期に九州に移入したそうです。
 鶴ヶ城では、3~12月に確認しています。また、2014年11月には小田山で幼虫を確認し、2015年は9~10月も確認して、特に小田橋付近の桜に幼虫が多くいました。分布も広がっているようです。

ヨコヅナサシガメの写真です。

ヨコヅナサシガメ (画像著作権者:古川裕司氏)


 以前は昆虫の外来種というと、アメリカシロヒトリやアオマツムシなどが代表でしたが、2015年は、ブタクサハムシ、アワダチソウグンバイなども見ました。特に、2015年10月9日は、鶴ヶ城西出丸でマツヘリカメムシ(松縁椿象)を見たのは、驚きました。
 マツヘリカメムシは、北米西部原産で、マツ類の害虫です。2008年に東京で確認され、首都圏を中心に分布を拡大しました。現在は、西は九州から東は東北地方南部まで分布を拡げているようです。今後、注意深く見ていく必要がある種だと考えます。
 最後に、原発事故は人災ですが、地球温暖化も人間が引き起こしていることです。その警告を生物たちは発しています。今の自分たちのことだけではなく、未来の地球のために、かけがえのない自然を残していきたいものです。
マツヘリカメムシの写真です。
マツヘリカメムシ (画像著作権者:古川裕司氏)

 

 

 

コラム2 「季節の爬虫類、両生類」から ~シュレーゲルアオガエル~  (平成27年8月 文:菅原宏理)

 犬を飼いはじめて8年になります。若い頃には当たり前すぎて気づかなかった風景や季節の移り変わりの美しさを、今頃になってようやく認識できるようになりました。年中無休、朝晩の犬の散歩のおかげです。

 私が一年の中で一番季節を感じるのは、シュレーゲルアオガエルの鳴き声が聞こえ始めたときです。シュレーゲルアオガエルというカエルを知っている人は少ないかも知れませんが、意外と身近に生息しているカエルです。有名なモリアオガエルと近縁で、モリアオガエルが池沼面上にせりだした木の枝に泡巣を作って産卵するのに対して、シュレーゲルアオガエルは田んぼなどの畔に穴を掘り、そこに泡巣をつくります。一見にはアマガエルに 似ており、カエルをまじまじと眺める人は少ないと思われるので、アマガエルと混同している人も多いです。春の田起こしの時期、田んぼの畔のあたりから聞こ える「ココココ、キキキキ」という甲高い鳴き声がこのカエルの鳴き声です。澄み渡るような、美しい音色の打楽器のような声で、私が最も好きなカエルの鳴き 声です。また、このあたりの平地では、春以降に一番早く鳴き始めるため、「また今年もカエルの季節が来た」と実感できるのです。
 田んぼに水が入 る5月頃になると、アマガエルの大合唱にシュレーゲルアオガエルの鳴き声はかき消されてしまいがちになります。それでも耳を澄ませば「グエッグエッグ エッ」というアマガエルの声の奥で遠慮がちに「ココココ」が聞こえます。また、アマガエルは低温で一斉に活動を控えるので、こんなアマガエルの全盛の季節 でも、早朝や冷たい雨の降る日などはまだシュレーゲルアオガエルの声だけが聞こえます。爽やかな朝の空気にこの美しい打楽器のリズムが心地よく、やっと布 団から起きだして犬に引っ張られているストレスを癒してくれます。
 植えられた幼苗も根を張りぐんぐん伸びてくる初夏には、新たな参戦者として 「ギューギュー」のツチガエルや「ングググ」のトノサマガエルまたはトウキョウダルマガエルが現れますが、依然としてアマガエルの勢いは衰えず、大合唱は 続きます。そんな頃ふと気がつくと、いつの間にかシュレーゲルアオガエルの声は聞かれなくなっています。命をつなぐ仕事を一足先に終えて、田んぼを離れた のです。普段のシュレーゲルアオガエルは、神社などのちょっとした林に生えている下草や低木にいることが多く、アジサイの葉などは絶好の落ち着ける場所の ようです。春先の鳴き声もどこの田んぼからも聞こえるのではなく、このようなちょっとした林が近くにあるような環境で聞かれます。やはりそこは森林棲のモ リアオガエルの近縁であると再確認できます。
 盛夏を迎えるとアマガエルの大合唱も収まります。それでも鳴きつづけているのは、湧水や緩やかな流れの小川などからほとんど離れず生活しているツチガエルです。8月を越え、9月になっても鳴いている個体もいます。この声が聞こえなくなると、カエルの季節もいよいよ終わり、生き物たちもみな長い冬に向けての準備に入ります。

アマガエルの写真です  モリアオガエルの写真です

アマガエル(画像著作権者:古川裕司氏)    モリアオガエル(画像著作権者:菅原宏理氏)

 

 シュレーゲルアオガエルの写真を載せてみました。アマガエルと違って顔の横(鼻先から耳にかけて)に黒い線が入らず、緑の単一色です(慣れると大きさや頭 部のシルエットでも区別できます)。モリアオガエルとの違いは、虹彩(日本人で言えば目の茶色の部分)に赤みが入らず黄色であることです。今は一生懸命冬 を乗り切るための準備をしているところです。たまに人家の電灯付近にアマガエルと一緒になって虫を待つ姿に出くわすことがあります。みなさんもぜひシュ レーゲルアオガエルを見つけてみてください。

シュレーゲルアオガエルの写真です

シュレーゲルアオガエル(画像著作権者:菅原宏理氏)

 

 今回はカエルについて、季節外れのコラムとなってしまいましたが、来春には是非カエルたちの一生懸命を重ねながら、季節を感じていただければと思います。

 

コラム1 「花の美しさ面白さを楽しむ」  (平成27年5月 文:五十嵐 義)

 早春、野原を散策するとタンポポやオオバコのように地面に葉を広げている植物が見られる。この形をロゼットというが、このロゼット形の植物もかなり多い。この他、ロゼットを作らず茎が直立するものがたくさんあるが、5月ともなると全てが芽を出し茎を伸ばしている。今、里山に出かけてみると、皆その場に合った、また、季節に添った草花や景色が見られるが、それはまた様々である。セイヨウタンポポの写真
 まず、花の付き方について観察してみよう。花軸の先端に花1つだけ付けたもの、エンレイソウやイワウチワ、1つの花のように見えるがたくさん花の集まったアザミやノゲシなど、また、軸の周りにたくさんの花が付いたオカトラノオ、メマツヨイグサ、フジ。さらには、軸が細やかに枝分かれしてそれぞれに花を付けているヤブガラシ、シモツケなども見られる。これらに注目して花を観察するのも面白いと思う。
 次に、花の咲き方はどうだろうか。ハナタデ、クサフジ、ナズナなど多くの植物は下に付いた花から順に上へと咲いている。また、タンポポのような花は、外側の花から咲き、真中へと順々に咲き揃っていく。この咲き方はどの花についても皆同じである。それでは、輪のように並んだ花、オドリコソウ、花軸の先でまるくかたまって咲く花、シオデ、枝分かれして咲く花、ヤブガラシなどでは、一番早く咲くのはどこだろうか。
 花の形にも十字形、バラ形、マメ形などいろいろな形がある。タンポポは同じ形の花(舌のような形の花びら、舌状花)の集まりであるが、ハルジョオンは外側に舌状花、内側は筒の形の花びら、筒状花の集まりで出来ている。また、花の中には花びらのない花、ドクダミやネコノメソウ、花びらがあっても小さい花、さらにはオシベやメシベのどちらかがない花、アケビカラスウリ、カナムゲラなどもある。細かに観察すると面白い。ハルジオンの写真
 どんな花でもたくさん生えている場合は見事な光景が見られる。例えば、休耕田の片すみに生えたタネツケバナの白い小さな花の集まり、農道の土手に群生するヒメオドリコソウの暗紅色と相まって見事な色彩となる。また、路傍で白く一面に揺れるヒメジョオンの花などいずれもすばらしい里山の風景である。その他、ミズバショウカタクリ、マイズルソウ、ヒメシャガなど、例をあげればきりがない。
 しかし、群生していない植物で、樹林や草原の中の花でも、そこには小さな自然があり、環境に調和していて美しいと思う。観察にはどんな植物か、その名前を知ることが大切であるが、そのためには構造をよく調べなければならない。
 何と言っても植物に親しみ、いつも図鑑をひもとき、植物の仕組みや働きを調べ、その素晴らしさを楽しんでいけたらよいのではないかと思う。

 

 

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