放射線Q&A18:甲状腺がんが見つかる人が増えているが原発事故の影響?

公開日 2015年02月27日

更新日 2018年12月12日

Q18:福島県の甲状腺検査で甲状腺がんが見つかる人が増えていますが、原発事故の影響ではないのですか?

 

回答

 はじめに専門家がどう見ているかと言いますと、Q&A2で回答した時と同様に、今回見つかった甲状腺がんは福島原発事故とは無関係にできた可能性が高いとしています。

 まず、甲状腺検査について話しますと、この検査は福島県の県民健康調査の一環として、事故当時18歳以下の福島県民を対象に平成23年度から実施されたもので、3年間で約30万人が受診しました。
 その結果、結節(しこり)やのう胞が見つからなかった方が約5割、小さいしこりやのう胞が見つかった方が約5割で、全体の約1パーセントの方から大きめのしこりやのう胞が見つかり、二次検査の必要ありと判定されたものです。
 そして二次検査でさらに詳しく検査を行い「悪性(がん)または悪性の疑い」と診断された方が、合計で110名いたというものです。

 (検査結果は下記の資料1の5ページ目)

 甲状腺検査は被ばく線量の推計が高い地域から順に開始され、平成23年度は約4万2千人、平成24年度は13万9千人、平成25年度は11万7千人が受診しています。
 (年度別検査実施市町村は下記の資料1の2ページ目)  


 毎年「悪性または悪性の疑い」の方が増えているように感じられますが、これは年度毎に検査結果を公表しているためで、検査を受けた人が増えるので、「がん」が見つかる人も増えている、ということがあります。

 県が、「甲状腺がん」の発症が福島第一原発の事故と無関係と見ている理由は次の5つの通りです。
 

  • 1、県民の被ばく線量の推定が、チェルノブイリ原発事故と比較してかなり低いことが挙げられます。
  • 2、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺がんの発症の増加が、事故から4~5年経過してから見られたことがあります。
  • 3、福島の甲状腺検査と日本の他の地域で行った甲状腺検査の結果を比較すると、しこりやのう胞が見つかる割合に差が無いことがあります。

  ※上の3つについてはQ&A2で説明していますので、そちらをご覧ください。

  • 4、今回甲状腺がんが見つかった子どもの年齢分布は、放射線被ばくをしていないで甲状腺がんが見つかった子どもたちの年齢分布に近いことがあります。

 

 県が公表している甲状腺がんが見つかった子どもの年齢分布(下記資料1の6ページ目)を見ると、8歳から年齢が上がるにしたがって増加しており、自然な増加と考えられます。
 また、原発事故の影響があるのであれば、7歳以下の子どもにもがんが見つからないと不自然で、特に小さい子どもの方が新陳代謝(細胞分裂)が活発なので、放射線による発がんのリスクが高いと考えられており、尚更です。
 
※人は新陳代謝により、古い細胞は死に、新しい細胞に替わることを繰り返していますが、活性酸素や自然の放射線などによって遺伝子が傷付けられ、まれに傷 が残ったまま細胞分裂を繰り返すうちに「がん化」することがあります。時間が経つにつれてがんが増えるのは、人にとって自然なことです。(※Q&A1を参照ください)

 

  • 5、チェルノブイリで見つかっている甲状腺がんと、今回福島で見つかった甲状腺がんでは、型や遺伝子変異が違っていることがあります。

 
 甲状腺検査を実施した福島県立医大では、甲状腺がんについてさらに詳しく検査しており、

 

 ①チェルノブイリで多い「乳頭がん亜型」というタイプのがんが福島では見つかっていない

 ②成人の甲状腺がんに多く、チェルノブイリではほとんど見つからない遺伝子の変異(BRAF)が福島では多い

 ③逆にチェルノブイリで多い遺伝子の変異(RET/PTC3)は福島では見られない

 ことを挙げています。

 以上のことから検査を行った県立医大と専門家の検討委員会では、今回見つかった甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくく、通常だと大人になってしこりなどから発見されるものが、精度の高い超音波検査で、小さいがんを早めに見つけていると推測しています。
 ただ、これらの結果から、今回の甲状腺がんが放射線の影響ではないとの証明にはならない、ともしており、引き続き慎重に分析を続ける必要があるとしています。

 なお、一巡目の甲状腺検査ではがんが見つからなかった数名が、平成26年度に実施した二巡目の検査で新たに甲状腺がんの疑いと診断され、平成27年2月に、一人の甲状腺がんが確定しましたが、検討委員会では放射線の影響とは考えにくいとの評価を変える必要はないとしています。


※資料1・・・県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要(暫定版) (PDFファイル 1MB)

          (福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 第18回福島県「県民健康調査」検討委員会資料(2015.2.12開催)より)

 

 

【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生

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