放射線Q&A6:子どもを外で遊ばせてよいのか?

公開日 2016年03月17日

更新日 2018年12月12日

Q6:これから暖かくなりますが、子どもを外で遊ばせたり、泥遊びや水遊びをさせても大丈夫ですか。

 平成25年5月30日更新

平成28年3月16日内容一部修正

 

回答

 

 これから夏にかけて、子どもが外で遊ぶ時、裸足になったり、薄着で遊ぶことが多いと思いますので、その場合の放射線の影響について考えてみましょう。

 

 今、原発事故で残っている放射性元素のほとんどは放射性セシウムです。放射性セシウムから出る放射線は、ベータ線とガンマ線およびわずかのエックス線です。放出される放射線の割合は、ベータ線が100個に対して、ガンマ線(エックス線も含めて)は92個と少し少なくなっています。エックス線は数が少なく、人への影響の仕方もガンマ線とほぼ同じですから、ガンマ線に含めて考えることにします。

 

 被ばくは、外部被ばくと内部被ばくに分けて考えますが、はじめに外部被ばくを見ることにします。

 

1、ガンマ線の外部被ばくによる線量

 毎日、新聞やテレビなどで目にする放射線量はこのガンマ線の量になります。

 

 ガンマ線は300メートル離れても半分ぐらいしか減らず、薄い金属板くらいはほとんど突き抜けるので、土に直接触れたり、薄着になったからといって被ばく線量が変わることはありません。夏でも長袖の服やズボンを着ている子どもがいましたが、福島県内の居住可能地域では空気中に原発事故による放射性物質はほとんどないので、身体に放射性物質が付着する状況にはありませんし、長袖を着てもガンマ線を防ぐ効果はないので、意味はありません。

 

 また、会津若松市におけるガンマ線の外部被ばく線量は、環境放射線量から推計した値も、子どものガラスバッヂによる積算線量調査からも、最大で年間1ミリシーベルト(mSv)程度と推計され、発がんの影響が確認されている100mSvより2桁小さい値になりますので、心配はありません。

 ※この値は自然放射線による被ばくの「地域による差」の範囲に入る程度です。

 

2、ベータ線の外部被ばくによる皮膚の線量

 ベータ線は空気中では数メートルしか飛びませんので、それ以上離れていれば届かず、通常、被ばく量はガンマ線よりずっと少ないので心配する必要はありません。


 それでは放射性セシウムが皮膚にくっついた場合はどうでしょう。

 ベータ線は皮膚の表面から0.5ミリメートルぐらいまで中に入りますが、大切なのは皮膚表面から0.07ミリメートルほど下にある基底細胞層です。基底細胞層は表皮をつくり、体を防護する重要な組織ですので、皮膚の影響に注目する時は、この基底細胞層への影響をみることになります。

 

 平成25年時点の会津若松市における1平方メートルあたりの放射性セシウムの沈着量はおよそ30キロベクレル(30,000 Bq/m2)ですので、その土がそのまま皮膚に付いたとすると、1平方センチメートル当たり3ベクレル(3 Bq/cm2)です。


 泥んこ遊びをしたとき、泥の付いた皮膚は、1時間当たり4.3マイクロシーベルト(0.0043ミリシーベルト)の皮膚線量となりますが、皮膚に影響の出る線量は2,000ミリシーベルト以上ですから、皮膚の損傷を心配することはありません。

 ※ここで言う皮膚線量は皮膚の等価線量のことで、通常使っている線量(実効線量と言います)とは違います。皮膚線量は実効線量の100倍の値になります。

 

 ※1 詳細な計算式はこちら

 


 次に皮膚がんを考える場合ですが、等価線量を0.01倍した実効線量で評価しますので、その値は0.0043マイクロシーベルト(0.000043ミリシーベルト)となり、これも皮膚がんを心配する必要のない値です。また、皮膚は新陳代謝が早く、傷ついた遺伝子を修復できない細胞があったとしても、がんになる前に新しい細胞に入れ替わるので影響はないと考えてよいでしょう。(※遺伝子の修復機能と放射線ががんを引き起こす仕組みはQ1を参照ください。)

 

 なお、皮膚についた泥を水で洗い落とせば放射性セシウムも落ちますし、皮膚からセシウムが吸収されることもありません。

 

 また、水遊びでは全身が濡れるので、水に触れる面積は大きくなりますが、プールの水に含まれる放射性セシウムは、平成24年度の本市の実績で1Bq/Kg未満と極めて少ないので心配は無用です。(なお、水浴場の基準は50Bp/Kg以下です)

 

 ※2 詳細な計算式はこちら 

 

3、内部被ばくによる線量(預託実効線量)

 本市の平成25年時点での放射性セシウムの沈着放射能はおよそ30kBq/m2です。この土を15g(大さじ1杯の量です)誤飲したとします。

 土の密度を1.3g/c m3とし、また地表からの5cmまでの深さを考えますと、飲み込んだ放射能は6.9Bqになり、セシウム134とセシウム137が同量あったとすると、両方を合わせた線量は0.00011mSvと極めて小さな線量で、これは全く問題とする値はありません。

 

 ※3 詳細な計算式はこちら

 

4、砂塵の舞い上がりの吸入による内部被ばく

  乾燥している日が続いている時に、風が強いと砂塵が舞い上がりますが、塵に放射性セシウムが付いているとセシウムも一緒に舞い上がります。

  ただ、舞い上がりは何時間も続くわけでなく、時間的に、また場所的にも限られています。これまでの調査から、舞い上がる量は地上に沈着している量の1万分の1から100万分の1までと見積もられ、意外と少ないものです。


  会津若松市の沈着放射性セシウムは、およそ30kBq/m2ですから、舞い上がりによる空気中の放射性セシウムは、大きく見積もっても3Bq/ m3となります。さらに過大な計算になりますが、この空気を1時間呼吸し続けたとして、その呼吸量を1.2 m3(大人の活動時の呼吸量)として計算すると0.00014mSvの内部被ばくとなりますが、これは全く無視しても構わないほど小さいことがわかります。

 

 ※4 詳細な計算式はこちら

 

 特別に砂塵の舞い上がりが激しい時や、除染活動などで舞い上がりが大きいと思われるときでも、被ばく線量はそれほど大きくならないと考えますが、より安心を得るためにはマスクをするなどして、吸い込まないようにするとなお良いと思います。

 

5、放射性ストロンチウム、プルトニウムによる被ばくの可能性

 放射性ストロンチウムは放射性セシウムに比べてエネルギーの高いベータ線を出し、骨に沈着しやすいことから骨髄が被ばくし、同じベクレルの場合、人への影響はセシウムよりも大きいとされていますが、ガンマ線を出しませんので、外部被ばくや骨周辺以外の組織には影響はほとんどないと考えられます。

 平成23年度に実施された国による土壌の放射能調査の結果、会津若松市では今回の原発事故による放射性ストロンチウムはほとんど検出されていません。

 

 また、プルトニウムはアルファ線を出すことから、内部被ばくでは注意をしなければならないとされていますが、今回の事故によって放出されたプルトニウムは、原発に近い60km圏内の限られた地点で、ごく僅かな量が検出されただけで、会津若松市では検出されていませんので、被ばくの可能性を心配することはありません。

 

 

 

  これまでに示した線量は極めて微量で、それによる健康への影響は全く心配しなくても良いレベルであることがわかります。

 子どもの発育には、栄養、休息と並んで運動が極めて重要とされています。戸外で遊ぶことは、単に体力を増進させるだけでなく、精神的な面や人間関係を形成する上でとても重要です。

 確かに、放射線は怖い面がありますが、それは量に関係します。今の会津若松市の放射線量は健康を左右するような量ではありません。健康に影響するのは、それよりもはるかに大きい量です。

 日常生活では放射線に気を向け過ぎず、戸外での遊びを制限しないでたっぷりと楽しむことが極めて大切と考えます。

 

 

 

 

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【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生

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