公開日 2013年04月04日
更新日 2018年12月12日
Q3:どのくらい放射線を浴びると人の健康に影響が出ますか。
回答
放射線の健康への影響を考えるとき、組織や臓器の働きが損なわれる場合と、がんや遺伝的な影響に分けて考えます。組織や臓器が損なわれる場合を確定的影響と言い、がんと遺伝的な影響の場合を確率的影響と言います。
確定的影響には、眼の白内障や脱毛、甲状腺のホルモン代謝異常など様々な症状がありますが、どの症状もある線量以上被ばくをしないと影響は現れません。この影響の出はじめる線量のことを「しきい線量」と言いますが、症状によってしきい線量は違います。
図1:しきい線量表
しきい線量は、川の堤防にたとえられます。川が増水しても水が堤防を越えなければ安全ですが、堤防を越えると洪水となり災害を受けることになります。放射線もしきい線量を超えなければ何も起こりませんが、それを超えると症状が出ます。
確定的影響で最も低いしきい線量は、男性が一時的に不妊となる100ミリシーベルトですが、白内障もこの程度で発症するのではないかと疑問が出され、現在、検討されています。なお、これらの症状は元どおりになるか、治療により治ります。
また、福島原発で被ばくした一般の人の線量は、最大でも80ミリシーベルト以下と推定されていますので、白内障をはじめとした確定的影響は見られないと思われます。
次に確率的影響である放射線の発がんリスクについて説明します。
放射線の発がんリスクは広島・長崎の原爆影響調査などから、100ミリシーベルトを被ばくしたときに、1000人に5人の割合で、一生の間にがんになる人が増えるというもので、これよりも多い被ばく線量ではがんの発症率が増加することが確認されています。
しかし、それ以下の被ばく線量では、他の多くの発がん原因や個人の生活習慣の違いなどによる差が大きいので、発がんリスクを明確にすることは出来ません。(そのぐらい発がんリスクは小さいのです。)
これらの知見から、※ICRP(国際放射線防護委員会)では、事故が収束するまでの当分の間は被ばく線量を年間20~1ミリシーベルトの間で、状況に応じて適切に管理し、将来的に年間1ミリシーベルト以下を目指すべきとしています。
世界中には放射線量が高い地域がありますが、特に発がん率が高いなどの報告はなく、自然界にもある年間10ミリシーベルト程度の被ばくでは、健康への影響を心配するレベルではないとするのが、大多数の専門家の考えです。
また、放射線を浴びたからと言って誰もががんになるわけではありません。100ミリシーベルトの被ばくでも、わずかにがんになるリスクが増えるだけで、しかも、そのリスクは飲食や肥満、運動不足、野菜を食べないなどの生活習慣による発がんリスクよりもさらに小さいのです。
図3:国立がんセンター がんのリスク表
ほかにも、福島原発事故のあと、鼻血が出たり、気力が出ない等を訴える方がおられますが、これらの症状については、放射線の直接的な影響とは考えにくいです。むしろ、放射線の被ばくを避けるために避難をして、長期にわたり生活スタイルが変わったことによると考えられます。外に出られず運動不足になったり、避難生活から栄養のバランスが崩れたり、家族と離れ離れの生活になったことから不安になるなど、様々な要因が考えられます。
阪神淡路大震災の後でも、似たような症状が見聞きされていますので、今回の震災及び原子力災害後のこのような症状については、医師の説明をよく聴くなどして十分に注意をし、対応を誤らないようにしなければならないと考えます。
文中の※印の項目をクリックすると詳細な説明にジャンプします。
【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生
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