放射線Q&A:甲状腺がんと放射線の影響

2013年3月21日

Q2:福島県民からの甲状腺がんの人が見つかったと報道されていますが、福島第一原発事故が影響しているのですか?

 

回答

 原子炉で事故が起きると、放射性物質の1つである「放射性ヨウ素」が大気中に放出されます。今回、甲状腺がんが注目されいるのは、この放射性ヨウ素が体内に取り込まれ甲状腺に蓄積されると、甲状腺がんを引き起こす可能性が高くなるためです。

 

 甲状腺は体の喉仏の下あたりに位置しており、わたしたちの成長やエネルギーの代謝を促す「甲状腺ホルモン」を分泌しています。甲状腺ホルモンの生成には「ヨウ素」が不可欠であり、普段は食べ物や飲み物などから、このヨウ素(放射線でなく、”安定ヨウ素”とよばれる)が取り入れられ、甲状腺に蓄積されていますが、原子炉事故等で大気中に放出された放射性ヨウ素も、同じヨウ素なので、呼吸によって、あるいは食べ物や飲み物などから体内に取り込まれることで甲状腺に蓄積されます。

 特に子どもの場合は成長が著しく、成長ホルモンがたくさん作られるので、その分甲状腺に多くのヨウ素が集まります。 

 

 1986年に起きたチェルノブイリ原発事故では、食品の放射性物質の規制などの対応が遅れたため、多くの住民が呼吸や牛乳などの食品から放射性ヨウ素を取り込むことになり、被ばくしました。

 一方、福島原発事故では、チェルノブイリ原発事故の教訓から、すぐに規制が行われ汚染された牛乳は破棄され、水道水や食べ物も低いレベルに抑えられたため、飲食物から体内に摂取された放射性ヨウ素は少なかったと考えられます。

 

 また、甲状腺のもう一つの特徴として、ヨウ素の蓄積量に上限があり一定程度蓄積されていると、その後さらに摂取しても甲状腺に蓄積されない、と言うことがあります。

 内陸部のチェルノブイリでは、周辺住民は普段からヨウ素が不足している状態であったことがわかっており、そのため原子炉事故で大気中に放出された多量の放射線ヨウ素は、いわば水が吸収マットに染み込むように、呼吸と牛乳から住民の体内に蓄積されていきました。

 幸い日本人の場合は、普段から昆布やわかめ等の海産物を食する機会が多いため、1日に平均約0.1~0.2ミリグラムのヨウ素を摂取しているといわれています。そのため。ヨウ素は日常的に充分に足りている状態であり、今回の事故で放射性ヨウ素が呼吸で体内に入ったとしても、あまり蓄積されなかったと考えられます。(なお、放射性セシウムにより甲状腺がんが発症するという、確かな証拠はありません。)

 

 平成25年2月13日に開催された県民健康管理調査検討調査会の中で、福島原発事故後に検査を実施した3万8千人中、3名から甲状腺がんが見つかったと報告されています。

 これまでの統計によると、甲状腺がんの発生率は年間10万人中0.2人であり、これに比べると数値的には多く見えますが、今回のように高精度の超音波検査を大勢の人に実施した例が過去にないこと、スクリーニング検査では、成人の3.5パーセントに甲状腺がんが見られること、また、死亡時に剖検を実施すると、直接の死因ではないが、甲状腺がんを発症している人が約20パーセントいること、などから福島県立医科大学では「今回の検査結果の数値が異常に高い数値とはすぐに断定できない」という見解を示しています。

 

 また、平成25年3月8日青森、山梨。長崎の子ども、およそ4,300人を対象とした甲状腺検査の結果でも、しこりやのう胞が見つかった割合は福島県の調査結果と同程度であったと環境省から発表がありました。

 さらに、チェルノブイリ原発事故の際は、事故後4~5年経過してから甲状腺がんの発症が増えていることから、県内で今回発見されたケースについては、福島原発事故以外の原因を考えるのが自然です。

 しかしながら、放射線量と甲状腺がんの発症の関係や時間経過による発症の推移については、引き続き注意深く見ていくことが重要です。

  

 なお、本市の事故当時の放射線プルームの飛来状況から考えると、放射性ヨウ素を1ミリシーベルト以上浴びた人はいないと推定されるので、本市で放射性ヨウ素による甲状腺がんの発症を気にすることは無いでしょう。

 

  

 

 

【回答者】会津若松市放射線管理アドバイザー・藤田保健衛生大学客員教授 下 道國先生

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